６話 ページ8
「監督、よろしくお願いします」
「ええ…」
私を疑うように、見極めるように見る監督に、笑顔で見つめ返す。
この人がヒロトの義姉さんなので、下手な行動はできない。もしも、エイリア学園だと気づかれたら、ここには居られなくなる。
「どこのポジションだ？」
「FWと言いたいところだけど、DFなの」
染岡くんの言葉にそう返すと、有くんが後ろで考え込むのが見えた。この試合は有くんに全て任せられているから、スタートメンバーについて考えているのだろうか。
「よし、塔子の代わりにAを入れる」
塔子…か。
いや、こんなことに反応していたら身が持たない。
「ん、分かった。塔子ちゃんの分も頑張る」
「ああ！頼んだよ！」
にかっと笑う塔子ちゃんに、こういう子のほうが可愛いのかななんて考える。
余計なことを考えていい時じゃないのは分かっているのに、どうしても嫌な考えが頭をよぎってしまう。
集中しなきゃ。
「よし、行くぞ。何としても佐久間たちを助ける」
ふぅと小さく息を吐く。
有くんのためにも、ほかのことを考えている余裕はない。
ピーと鳴ったホイッスルに思考を切り替える。
相手のボールはパスを経て佐久間くんに渡って、彼の行動が停止したかと思えば、有くんの必死な声が耳に届いた。
「皇帝ペンギン……一号！！」
「やめろ！！！！」
見ただけでわかる、これは使ってはいけない技だ。
止めないと佐久間くんだけじゃない。円堂くんまでただでは済まないだろう。
よし。
「アブソリュート…シールド」
目の前に大きな盾を広げて皇帝ペンギンを受け止める。
なんてことはない。これでも、エイリア学園のマスターランクに位置する私はディフェンス力だけには自信がある。
「今回初参戦の神野A。難なく止めたぁああ！！」
「有くん！！」
止めたボールを有くんへとパスする。
「…あ、ああ！っみんな、佐久間にボールを渡すな！あれは、禁断の技だ！！！」
「な…」
詳しい話は後らしく、今は試合に集中する。
DFだからってジッとしているのは良くないが、佐久間くんがシュートを打てないようにするためにも静かに後ろのほうで戦況を見守る。
「皇帝ペンギン」
「「二号！！！」」
有くん達が放ったシュートは。
「ビーストファング！」
奇しくも、源田くんに止められてしまった。
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作者名：ハル x他1人 | 作成日時：2019年5月7日 22時
