幸せを願う【完結】 (ページ2)

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「おはようー！瀬奈！」

「…おはよ、真冬」

「んー？なんか元気なくない？瀬奈さん？」

バカみたいに元気にあいさつするのは、私のクラスメイトで、幼馴染。

そして、恋人だ。

真冬とは去年から付き合っている。二人が、16歳のとき。告白は、真冬から。一生懸命に気持ちを伝えてくれた彼に、柄にもなくキュンとしてしまったのは記憶に新しい。

ずっと幼馴染だった真冬を男として意識したことはなかったけど、まぁそんなふうに言われたら、誰だって嬉しくなっちゃうじゃないですか。

女の子なら特にさ。

「べっつにー？あなたが元気すぎるだけじゃないですかね？真冬さん」

私は得意げに言って、いや、そういう風を装って、あくまで元気であることを真冬に伝えようとする。

一昨日の検査結果。

まだ、伝えていない。真冬に言えるはずない。
私、後何年かの寿命なんだって、なんて。

「うーん…そう？まあ元気ならいいや」

そう言って、へにゃりと笑ってみせる彼に、そんなこと。

生死に関わる大きな病気だと判明した私には、すぐにでも入院が必要らしい。けど、私は入院なんてしたくなかった。

後残り数年の命を、ベッドに縛られ、点滴からの栄養で延命するような人生は嫌だったから。

どうやら、私が死んでしまうことは、もう回避のしようがないことらしい。「誠に残念ですが」。そんな言葉、何度聞いたか。別に、お医者さんが悪いわけじゃない。健康診断をしてくれた看護師さんが悪いわけでもないし、いつもの病院のおじいちゃんが悪いわけでもない。

そんなのよくわかってる。誰も悪くないんだって。

けど、少しだけわがままを言った。

「そういえば瀬奈、病院どうだったの？」

一瞬、しんと静まった空気を破って、緊張したような面持ちで、真冬は私に問う。そりゃあ、ただの高校の健康診断から、市内一の大病院まで話が発展したなら、誰だって結果が気になるに決まっている。

固唾を飲んで私の言葉を待つ真冬を見て、彼なりに心配してくれていたんだなぁ、と嬉しい気持ちになる。本当に、真冬はこういうところが優しい。

でも、だけど、ごめんね。

「んーん？なんともなかった！せっかく休日潰して行ったのにさー」

「そっか！よかったよかった…」

「もう、何心配してんの！この私が病気になるとでも？」

「あははは、瀬奈、ここ数年風邪すらひいてないもんね」

「あったりまえよ！」

今は、そのあなたの優しさに、嘘をつかせて。