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_とあるマフィアの男_ ページ29





俺は、生まれた時から、人間じゃなかった。



俺を産んだ両親が、人間じゃないから。









悪魔、と呼ばれていた。
2人とも裏社会で生きる人間だった。
もちろん「悪魔」と言うのは仇名だ。本当はただの人間なんだろうけど、俺が覚えている範囲で人間らしいことをしている親は一度も見たことがなかった。

反抗する人間は、力で従わせた。
血も涙もない。
実際、泣いているところも血を流しているところも、一度も見たことはなかった。

そんな2人から生まれた子供、俺は「悪魔の子」という称号を、誕生日のその日には手に入れていた。
別に嫌いなわけじゃない。父のことも、母のことも。
ただ、好きと言えないだけだ。
そんな両親から、俺は全てを学んだ。
自己形成には幼少期の環境が最も影響すると言われている。
俺はその言葉を体現したかのように、見事な父の生写しになった。
性格、物理的な強さ、得意なことも不得意なことも、顔も雰囲気も。
俺と会った奴はみんな口々に言う。

恐れている人物に似ている、というのはそれだけで相手に威圧を与えるものだ。さらに、ただ似ているだけではなく、本当につながりがある。
それだけでこの世界では一段と生きやすくなる。
後ろ盾というものはどの世界でも重宝されるものだ。

だけど、そんな俺には「自分」というものがなかった。
周りから見ても、自分から見ても、所詮俺は「あの悪魔の息子」でしかないことに、ずっと気づいていた。
ただ、父のようにあればいい。
残酷、冷徹、外道。
俺はずっと、それ以上でもなく、それ以下でもなかった。
自分などなくていい、そんなものは求められていないのだから。
周りに、他人にどうしてそんなに認めてもらいたかったのか、今ではわからない。
ただ、「求めてくれる人」が少なくて、「求められるもの」に従うことしかできない。


ひたすらに、愛に縋っていた。

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けんまおし1016(プロフ) - とてもおもしろいです!少し文章の間を広くしてくれれば読みやすいと思います! (2022年8月17日 19時) (レス) @page3 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃ(プロフ) - コメント失礼致します!!読んでて凄くきゅんきゅんしました、!!!素敵な作品を本当にありがとうございます😭💕💕 (2022年8月14日 5時) (レス) @page21 id: c45d7c6a24 (このIDを非表示/違反報告)
ノンレム睡眠 - 前々から気になってた作品で読んでみるとど好みストレートでびっくりしました🙃 これからも愛読させていただきます!神作ありがとうございます🙌❤ (2022年8月12日 18時) (レス) @page21 id: 28b1a8c3b0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Ir | 作者ホームページ:http://manaaa  
作成日時:2022年7月16日 22時

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