3話 ページ3
.
いや、本当に怖いです。
誰にいうでもなく小さく声に出した言葉は、当然誰にも届くことはなく空気に溶け込んで消えていった。
目が覚めたら明らかに知らない男の人と同じベッドで寝ていて明らかに事後だろ、という光景が広がっていた。
言語化してみるとあら不思議。恐怖倍増だ。
そもそも知らない人と寝ていたという事実だけであと1週間は眠れない夜を過ごせそうだ。
だが、私の恐怖はそんな小さなものでは収まらない。
ちらっ、と目線をやるも、それは圧倒的な存在感を放っていて、見ただけで人をすくみ上がらせるような雰囲気を纏っていた。
それは拳銃。
流石に見間違いでは無かったか、という、まだ自分の五感が機能していることへの安堵を抱くも、そんなもの風前の灯だ。今は、この、指一本で人を殺められる能力を持つこれの方が、私の感情を支配している。
本当に怖いんですけど。
なんでこんなものがあるの?
ここ日本だよね?
若干涙目になった自分の表情に、情けない、と叱咤するも、当然そんなことじゃ現状は変わらない。
落ち着いて、冷静になって。
音をあまりたてないよう静かな深呼吸をし、頭を少し冷やした。そこで私は、もしかしたら、と一つの考えに行き当たる。
この銃で脅されて仕方なく身を重ねるという事態に発展したのではないか、と。
可能性は、なくはないと思う。
だがまあ、私に女性的な魅力があるかと聞かれたら、自信満々に「ある」と返すことはできない。
胸はない。それと、一日3食食べることが少ないので単純に痩せているのだ。お腹が減らないから、という理由でどこまで行けるか減量チャレンジをしたこともあった。
痩せていることは別にマイナスではないと思うが、男性から見た時にガリガリの私よりも女性らしいふくよかな人の方が魅力的に映ることくらい、恋愛に疎い私でも理解できる。
ぽっちゃりくらいがちょうどいい、という言葉も聞いたことがある。
私はこの男にとってわざわざこんなもので脅してまで一夜を過ごしたい相手だったんだろうか、と改めて自分に問い返せば、自信のない答えが来ることもなんとなく分かった。
だけど、それ以外思いつかないんだよなあ。
もやもやした気持ちのまま、しばらく思案する。
けれど、その時、最悪の事態が起こる。
「ん、ん〜〜。うん? あ、おはよう」
189人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
けんまおし1016(プロフ) - とてもおもしろいです!少し文章の間を広くしてくれれば読みやすいと思います! (2022年8月17日 19時) (レス) @page3 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃ(プロフ) - コメント失礼致します!!読んでて凄くきゅんきゅんしました、!!!素敵な作品を本当にありがとうございます😭💕💕 (2022年8月14日 5時) (レス) @page21 id: c45d7c6a24 (このIDを非表示/違反報告)
ノンレム睡眠 - 前々から気になってた作品で読んでみるとど好みストレートでびっくりしました🙃 これからも愛読させていただきます!神作ありがとうございます🙌❤ (2022年8月12日 18時) (レス) @page21 id: 28b1a8c3b0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Ir | 作者ホームページ:http://manaaa
作成日時:2022年7月16日 22時