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15話 ページ16

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「ほ、ほんと…」


言いかけて、唐突にその場に鳴り響いたのは、脳天気とも言えるほどに響いた電話の着信音だった。

聞いたことのある有名通信会社の着信メロディが、2コールもしない内に、傍に控えていた男の人が、さっと坂田さんに携帯電話を手渡す。

それを当たり前のように受け取り、画面を確認した坂田さんは一瞬苦い顔をした後、私と目を合わせた。


「あ、ごめん。ちょっと出てくるね」

「あ、は、はい」


そう言い残すと、そのまま大きなドアを開けてどこかへ行ってしまった。今の今まで坂田さんと会話をしていた私は、すっかり手持ち無沙汰だ。

困惑の表情を伝える間もなく、さっさと私の前からいなくなってしまった。

どうやら、ここで待てということらしい。とはいっても、今の私にできることは指を組んだり爪をいじったりするくらいだけだ。

暫くして、そろそろこの状況に苦痛を感じ始めた頃、坂田さんは帰ってきた。


「ごめん、Aちゃん。俺ちょっと出てくるわ」

「え、あ、はい」


私の胸の内などいざ知らず、業務連絡のように早々に本題だけを伝えられる。いきなりの外出連絡に私は少し驚く。よほど急ぎの電話だったのだろうか。


それにしては坂田さんの顔には焦りの表情は見えず、電話を受ける前の、あの嫌悪丸出しの感情の方が色濃く表れていた。まあ、笑ってはいるんだけどね。


けれど、この時間帯にかかってくる電話と言えば、何となく想像がつく。

仕事の連絡だろう、多分。それなら嫌になる気持ちも十分分。


坂田さんはテキパキと私の後ろにいる人たちに指示を出す。どうやら何人かには坂田さんについてきてもらうらしい。

そりゃそうだ。マフィアとか命を狙われることがあるのだろう。映画で見たことあるし。

だって、なんかこの人、俺トップです、みたいな感じだ。一番強くて権力もありそうなオーラが出ている。


「それじゃあ、行ってくるわ。またな」

「あ、いってらっしゃい」


つい反射で、誰かが行ってきます、と言うと行ってらっしゃいといってしまう。実家にいた頃の癖が抜けきれていない。


そのまま坂田さんは体格のいい2人の男の人を連れて、帰ってきたはずのドアから颯爽と姿を消し、どこかへ行ってしまった。

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けんまおし1016(プロフ) - とてもおもしろいです!少し文章の間を広くしてくれれば読みやすいと思います! (2022年8月17日 19時) (レス) @page3 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃ(プロフ) - コメント失礼致します!!読んでて凄くきゅんきゅんしました、!!!素敵な作品を本当にありがとうございます😭💕💕 (2022年8月14日 5時) (レス) @page21 id: c45d7c6a24 (このIDを非表示/違反報告)
ノンレム睡眠 - 前々から気になってた作品で読んでみるとど好みストレートでびっくりしました🙃 これからも愛読させていただきます!神作ありがとうございます🙌❤ (2022年8月12日 18時) (レス) @page21 id: 28b1a8c3b0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Ir | 作者ホームページ:http://manaaa  
作成日時:2022年7月16日 22時

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