何度でも君にリアコ【オリジナル】 (ページ8)

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8話ページ8

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コツコツ。
人通りの殆どないアスファルトの歩道。どこにでもあるただの道。だけど、その周りに見える景色には全く見覚えがなくて、いつも見ていた街とは少しも似ていなくて。ガードレールに貼ってあった看板に「ニュータウン化緑と人が共栄する街へ」と書いてある。すぐ傍には広葉樹が植えてあって、片仮名で聞いたこともない木の名前が記載されていた。
さっきまでの焦燥感と悲しみから来る無性の怒りとはかけ離れた感情が私を支配していた。ここは私の家がある駅じゃない。そんなことは降りる前から分かっている。バイト先と家とは電車で二駅。分かっていても、あそこにあのままいたら、きっと私は狂っていた。誰かの目があるだけで、吐きそうだった。そういえば、私のスマホを拾った女は、私の反応を見てどう思ったんだろうな。
どうでもいいことを考え続けることだけが、今の私が正気を保てる唯一の方法だった。
辛いも悲しいも、あと一瞬で全て消え去ってしまっていた。ただそこにあるのは、未来の見えない私の人生だけ。
MiRiくんだけだった。君だけが全てだった。
そんな私に、それ以外の生き甲斐を見つけろなんて、神様はそんな酷なことをどうしてできるのだろうか。
トボトボと歩く、というより、むしろ今の私は前を向いて歩いている。もちろん目に光はないが。君が女性らしい仕草が好きだと言ったから、頑張って身につけた歩き方や魚の綺麗な食べ方。でもさ、君がいなきゃ何にもなんないよ。

だめだ。
これ以上考えるのはダメだ。

すぐ近くには高い駅ビルがある。今すぐそこに上って、飛び降りてしまえたら、どんなに楽か知らない。でも、できない。

あれ？

でも、

どうして？
どうして飛び降りちゃいけないんだっけ。
どうして死んじゃいけないんだっけ。
なんで、生きなきゃいけないの？
なんで、私は今生きてるの？

すぅ、と息を1つ吸うと、私は思い出す。
どうして今まで生きてたのか。

そんなの、

MiRiくんがいたからに決まってた。
じゃあ、MiRiくんがいなくなるのが分かってる今は？

「ふふふふ、あはははははははははははははは！」

私は笑い出していた。誰もいなくなった薄暗い道路で1人。何に笑っていたのか、今でも分からないけど、それでも私はひたすら笑っていた。
気がついたら、見上げていたはずの駅ビルの屋上に立っていて。

フェンスから身を乗り出した私は

いつのまにか、夜空へ飛んでいたんだ。