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「お待たせ。ハク様のところへ行こう。」
重い扉が開かれ、ヒョウが外へ出て来た。
「喋れたんだ。」
「人間の世界で話せないだけ。こっちが本来の場所だからね。湯婆婆様とは契約を解除して来た。後はハク様にお気持ちを聞くだけだ。まぁ、ハク様の事だから、素直な気持ちを言うわけないのはわかってるけど。」
千尋の問いかけに答えつつ、ヒョウは笑う。シンは相変わらず俯いていた。そんな様子を見て、ヒョウはシンに向かって微笑む。
「泣くの?」
「……うるさい。ハク様のところへ行くんでしょう?早く向かいましょう。」
シンはヒョウの手を払いのけると、釜爺のいる場所へ歩き出した。釜爺のボイラー室に着くと、シンは部屋へ入った。
「失礼します。」
「ん?……ああ、シンとヒョウ、千尋もいるのか?ハクなら隣の部屋にいるぞ。」
ヒョウは少し待ってて、とシンと千尋の方を振り返った。ヒョウはハクのいるであろう部屋の襖に手をかけ、ぴしゃりと立て切った。彼が部屋に入ってしばらくすると、襖に貼られた和紙から青白い光が漏れる。
「何をしているんだ?」
「さあ。分かりません。油屋を出る前に彼がやり残したことがあるというものですから。」
青白い光はスッと消えていき、ヒョウは何事もなかったように部屋から出て来た。そして釜爺に微笑みかけた。
「釜爺、今までありがとう。僕は釜爺に会えて幸せだった。もしも、湯婆婆に会うことがあったなら、反抗してすみませんでしたっていうのと、油屋が嫌いになったわけじゃないって伝えて。」
3人が踵を返そうとすると、ボイラー室の奥からリンが出て来た。なつかしい、初めて千尋とリンが出会った場所だ。リンはヒョウを一発ひっぱたいた。そして2人は対面した状態で睨み合う。最初にリンが唸るように言葉を紡ぐ。
「ヒョウ、お前油屋を出るんだってな。いっつもお前は俺の気持ちも考えないよな!」
「悪いとは思ってるけど。僕はあの時とは違うんだよ、姉さん。」
「いや、変わってねぇよ。昔からお前はワガママで勝手で考えなしさ。俺がいないと……」
「ダメなんだ?僕のことをそうやって決めつけないで。……姉さんだって、気づいてないわけないでしょ?僕の神通力は普通より強いんだよ。もう、守られなくていい。だから、油屋とは契約切れなんだよ。」
リンは目を見開き、黙り込んだ。そして、少し低い声で言葉を紡いだ。
「お前、ここで何か術を使ったな?」
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作者名:manapanda3 | 作成日時:2018年5月17日 21時