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3人は豊穣の神のもとを去り、森を歩いていた。神に会うことはそれだけで力をくれるのだろうか。千尋は行きよりも足が軽く感じた。
「さっきの話……どうしますか?」
「へ?あ、私?!……正直迷ってるの。」
迷ってる?とシンは不思議そうな顔をした。千尋は続けた。
「ハクが戻ってくるのは嬉しいし、これ以上の事はないよ。でも、ハクは喜ぶかな?」
「自分が生きるのと引き換えに他の神の命がなくなるという事に、ですか?」
千尋は頷いた。シンは少しだけ黙ったが、またすぐに続ける。
「……きっとハク様にはまだやり残したことがあるんです。だから消えかけて苦しくても、まだ油屋に残っている。ハク様のお気持ちがわからない以上、この考えもエゴなのかも知れませんが。」
「……私、怖いの。だって、豊穣の神様の言った通りにするのは、ハクにその命を背負えと言っているようなものだから。そんなの本人の気持ちもわからないまま決める事じゃないよ。」
3人は黙って歩き出した。しばらくしてヒョウが立ち止まった。2人がヒョウを振り返ると、ヒョウは目に涙を浮かべて居た。尻尾が揺れた。
「……気持ちはよく分かりますよ、ヒョウ。でも、他人の気持ちを背負って生きるのは想像以上に苦しいんです。」
「ヒョウ……ねえ、シン。どうにかしてハクの気持ちを聞き出せないかな?」
千尋はシンに尋ねた。シンは考え込む。
「アテがないといえば嘘になります。……湯婆婆様に魔法を使っていただくことです。」
「どうして不安そうなの?」
千尋が尋ねるとシンは少し困った顔をした。そして、ゆっくりと口を開いた。
「あなたが最初にあっちの世界へ入り込んで、その後帰ることになりましたよね?あれは、ハク様の計らいなんです。あなたは湯婆婆様に殺されるはずだった。」
「え、今なんて?……おばあちゃんが私を?」
「その運命を変えたのはハク様でした。ハク様は自分の身が八つ裂きになってしまうとしても、それほどの代償が必要だとしても、千尋を助けようとした。湯婆婆様はそこで折れました。そしてもちろん、ハク様の命も救ったのです。油屋に来る神々のうち人間嫌いな神を敵に回してでも。」
神の国に入る事の重大さを知らない昔の千尋なら、信じる事ができなかっただろう。しかし、今なら分かる。神々の安息の地に、人間が足を踏み入れることなどあってはならないのだ。千尋は助けてくれたハクとそのハクを許した湯婆婆に心から感謝した。
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作者名:manapanda3 | 作成日時:2018年5月17日 21時