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猫はずんずん歩いて、森の前まで来た。千尋はハッとした。

「この森……知ってる。覚えてるわ。」

「にゃー。」

猫は振り向き一声鳴いた。千尋は自分が足を止めていることに気づき、再び歩き出した。千尋と猫は見覚えのある古いトンネルの前に着いた。

「風を吸い込んでる。やっぱり、ここは……」

《着いて来てください、人間の少女よ。》

「えっ?」

千尋は脳に直接響くような声に驚いた。白猫の緑色の目が金色に輝く。この猫、ハクじゃない、と思っていると、声は続けた。

《ハク様に会いたいのなら、私に着いて来てください。》

「この先に、ハクがいるのね!」

千尋は足を踏み出した。白猫はくるりと前を向き、トンネルの中を進み出した。暗くてジメジメして不気味なトンネルを通り抜ける。千尋は1人で歩けなかった事を思い出して、クスリと笑った。しばらく歩くと、明るく視界がひらけた。

「うっ……やっと抜けた。……あれ?」

千尋は眩しくて目を細めた。目が慣れて来たところで猫を探してみるがどこにもいない。

「私はここです。千尋さん、時間がありません。」

不意に後ろから声がして、千尋は肩をピクリと跳ねさせた。後ろには白い髪をした少女が立っていた。少女は宙返りすると、大きな猫の姿になる。

「私の背に。すぐに油屋に向かいましょう。」

「時間がないってどういう事?」

「……ハク様の神通力が弱くなっています。あなたの力が必要なのです。」

千尋は驚き目を丸くした。

「ハクの神通力が……?ねえ、ハクは大丈夫なの?!」

「それはなんとも……とにかく早く行きましょう。」

白猫は目を曇らせて言った。千尋は無言で背に乗った。白猫は千尋がしっかり掴まったのを確認してから、風のように走り出した。あまりの早さに千尋は目を瞑った。

「さあ、着きました。中へ行きましょう。」

「私人間だよ?大丈夫なの、中に入れて。」

「あなたに関しては湯婆婆様も容認しておられますゆえ。さあ、遠慮せずに。」

白猫の少女は先へ行くように促す。千尋は名前を尋ねた。

「貴方は……?」

「申し遅れました。シンと申します。ハク様の部屋はこちらです。」

シンが示す方へ行くと、顔色が悪いハクが横たわっていた。湯婆婆もそのそばにいた。

「ハク……!」

「千かい。今そいつに声をかけても無駄だよ。」

ハクに語りかける千尋に、湯婆婆は冷酷に言い放った。千尋は目を見開いて、固まった。

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設定タグ:千と千尋の神隠し , 二次創作   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:manapanda3 | 作成日時:2018年5月17日 21時

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