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夕方になって橋に行くと、そこに居たのはあの怪しい男だった。
「やあ、待っていたよ。やるべきことは覚えているね。」
私は頷いた。私は夢で言われたままに縄に小さな輪を作り、欄干の下の方に縛り付けた。男は満足げに頷いた。
「では、彼方を見ていなさい。」
男が指差す方向を見ていると、突然そこが夢の中の風景になる。范無咎は下の方で私を見ている。
「これは……」
「なに、ほんの下準備ですよ。謝必安さん、でしたよね?」
「……なぜ名前を?」
男はにっこりと笑った。
「……知らないはずがないではありませんか。さて、まずそこにある岩の上に乗って、縄の輪に首を通してください。」
私は不思議に思いながらも岩の上に立ち、縄に首を通した。
「これはあなたが落ちて怪我をしないようにするためです。首にしなければならない理由はいろいろありますが、説明している暇はありません。あの人が一人であそこにいられる時間は限られていますから。」
「……分かりました。では、次になにをすれば?」
「岩から飛び降りてください。彼の方に向かって。」
私は下にいる范無咎を見据えた。彼の表情は私からは見えない。……待っていておくれ、今から君のところへ行くから。私は岩から飛び降りた。私の体は少しずつ彼のところへ舞い降りて行く。すると凄まじい怒号が響く。
“テメェ、何してやがる!”
彼に手を伸ばしてもう少し、というところで彼の姿は雲散霧消した。
(……はは、結局、最後まで彼とはいられなかったんだ。)
私は苦しいのと、悲しいのと、悔しいのと……いろんな苦痛が溢れ出て目からこぼれる。
ーごめんね、無咎。本当は気付いていたんだ。君がいなくなった理由も。葬式だって覚えていた。骨壷を叩き割った時、その音が君の泣き声の様に聞こえたんだ。だから、骨を拾い集めた。首吊りか……ふふ、私にお似合いだ。……出来ることなら、幻でもいいから君に逢いたかった……
だんだん力が抜けていく。手からカシャリと傘が落ちた。
「傘……ひろ、わ、なく、ちゃ……」
私は朦朧とした意識の中、傘に手を伸ばした。その手は傘に届くことはなく、ただ空を切るだけだった。……また、届かなかった。すると、不意に優しい空気が私をふわりと包み込む。
“何でお前まで来たんだよ、バカ必安。お前には来て欲しくなかったのに……!”
優しい声。ああ、懐かしい。私は笑いながら答えた。
“私たちは兄弟で、私に君が必要だからだよ。また会えるね、無咎。”
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manapanda3(プロフ) - オリジナルフラグを外しました。指摘してくださった方ありがとうございます。返信の文章があまりにもひどかったので書き換えました。今後このようなことがないように意識していきたいと思います。 (2018年11月17日 16時) (レス) id: 1abb178aa1 (このIDを非表示/違反報告)
まる - 作品を作る前にルールをしっかりご確認下さい。オリジナルフラグをちゃんと外して下さい違反行為なので。外し忘れ、とかいう軽い意識はおやめ下さい。オリジナルの新着に二次創作が上がってくる事を不快に感じる人もいます (2018年11月8日 23時) (レス) id: 860a58c456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:manapanda3 | 作成日時:2018年11月8日 6時