ハイキュー短編集

身体力測定【夜久衛輔】 ページ36

side夜久








_____________春




新学期が始まって約2週間。



俺にとって一番嫌いな日がやって来た。







「ﾁｯ..この世に身長なんてものなくなりゃいいのに」



「舌打ちしないのやっくん」



「身長なかったら皆アメーバみたいになるぞ」



「私は体重が無くなって欲しいなぁ」



「お前女に刺されるぞ」



「脂肪で跳ね返してやるもーん」



「刺されろ」



「え酷い」








舌を出しべ、と黒尾と言い合いするAを見てため息を吐く。


毎年補助員を任される俺達は周る時間も一緒で、今回も全校生徒が測り終わった後運動系の部活の奴等が測定に周っていた。


身長、体重、座高と測り終えた俺達は次の場所へと向かう為廊下を歩く。



この俺から漂う負のオーラは毎回のもの。


三年間で1センチすら伸びないってどういうことだコラ。








「もー衛輔そんな拗ねないのー！」



「うるせーつかお前は何で伸びてんだよ」



「えへへ、成長期？」



「俺は終わったって言いてぇのかコラ」









そう、去年に比べて2センチ高くなったA。


もうほぼ目線も変わらねぇし、結構焦る。



もしこのまま抜かされたら……





駄目だ、いつまで経っても告える気がしない。



身長さえあれば自信が持てんのにな…







「衛輔はそのままがいいよ。ちっさくて可愛い」







…こんな事言われるようじゃ、まだまだ男として意識してもらえてねーし。


つーか傷口抉るような事んな笑顔で言うなよな…







「A、男は可愛いよりかっこいいの方が嬉しいんだぜ？」



「？そうなの？でも衛輔はいつもかっこいいからさ。今更言わなくても」



「!!?//」



「わ、次結構並んでるよ。早く行かないと！」








たたたーっと先に走り「早く早くー！」と笑顔で手を振る彼女。


急なカミングアウトに俺の顔からはふしゅぅ…と湯気がたち、その場にしゃがみ込む。







「……今更だってサ、やっくん？」ﾆﾔﾆﾔ



「天然怖いね」



「……うっせー//」








…………ほんとあいつ、ずるい。







俺に足りないのはどうやら身長ではなく、天然な彼女に動じない心のようだ。



…身長よりも習得難しそうだな。




ははっ、と渇いた笑みが口からこぼれ落ちた______








___fin___








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