検索窓
今日:18 hit、昨日:0 hit、合計:206,883 hit

133 ページ16

頬を撫でる指が止まり、五条先生はしばらく黙った。

沈黙を不思議に思って顔をあげると、五条先生の青い目と私の目がばっちりと合った。

五条先生の青い目はいつもと同じように美しかったが、それでいて儚くて、いつもより穏やかに優しい眼差しで私をみていた。
その眼差しはまるで、凪いだ海のようだった。


「僕はAが好きだよ。」


五条先生がそう言った瞬間、少し空いた窓から吹き抜けた風が、大きくカーテンを揺らした。

私の心もその言葉を聞いた瞬間、大きく波打つのを感じた。

ずっと待っていた言葉が突然降ってきて、私は何も言うことが出来なかった。


だけど頭は無意識に五条先生の言葉を理解したらしく、目からは堰を切ったように涙が溢れでた。

ずっと欲しかったけど、手に入らなかった言葉だった。

もう一生、その言葉を五条先生から聞くことはないと、覚悟していた。


「Aのことをたくさん傷つけたね。僕がくだらないプライドを捨てきれないせいで、Aのことを泣かせてばかりだった。本当にごめん。」


そう言いながら私の涙を自らの指で拭って、泣き止まない赤子をあやすように私の背中をさすった。

私の涙はなかなか止まらず、視界はずっと涙でぼやけていたが、五条先生が優しい笑みを浮かべて私を見てくれていることはわかっていた。



少しだけ涙がひいて、落ち着き始めた時に五条先生は再び口を開いた。

「ところでA、今日が何日か知ってる?」

自分が何日寝ていたのかも分からなかったので、黙って首を左右に振った。

「今日は3月14日だよ。」

婚約式が3月7日だったから、私は1週間寝ていたことになる。

『私、1週間も寝てたんですね。』

「そう、1週間も寝てたんだよ。眠り姫みたいに眠りこけちゃってさ。Aは自分の誕生日も寝て過ごすのかと思っちゃったよ。」

五条先生は悪戯っぽく笑いながら言った。

134→←132



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (275 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
991人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ユリ.(プロフ) - riyaさん» こんばんは!楽しみにお待ちいただいて、ありがとうございます(^^)実はまだ1行しか書いていないので、2話くらいかけたらパスワード外して公開しますね。もうしばらくお待ちください!! (2021年6月19日 23時) (レス) id: f91a1710c7 (このIDを非表示/違反報告)
riya(プロフ) - こんばんは。続編のパスワード教えて下さい。楽しみに待ってます (2021年6月19日 23時) (レス) id: 0599723b2d (このIDを非表示/違反報告)
ユリ.(プロフ) - あぷるさん» ありがとうございます!あぷるさんの心の支えの一部にでもなれたなら、とても光栄です!!そうなんです…切ない系の恋が大好きすぎて、何度もすれ違わせてしまいました。そして続編でも…すれ違う予定です。(笑)!優しいお言葉もありがとうございます☆ (2021年6月16日 21時) (レス) id: f91a1710c7 (このIDを非表示/違反報告)
あぷる - 完結本当におめでとうございます。最近の心の支えだったといっても過言ではないです!笑 すれ違いを重ねる恋がもどかしくって…完結と思うと寂しいですがまた新作などがありましたら飛んできます!!お疲れ様でした。いつか結婚式をユリさんが挙げれること祈っています (2021年6月15日 18時) (レス) id: 9ae6da1d4e (このIDを非表示/違反報告)
夢花(プロフ) - そうなんですか!楽しんでコメント読んでいただいて光栄でござりまする。(ほぼ素) (2021年6月15日 16時) (レス) id: 78d9e81099 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ユリ. | 作成日時:2021年5月6日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。