Forget me not 【勿忘草】

・Ep15 ページ16

(あ…)





あの音が発せるように口の形を何度も作った。

でも、出てくる音は何もなかった。









当然、ママたちも声を失ってから、

何日か経ってから気づいた。








それまで、『うん』だけは言っていた私。

その私が『うん』すら言わなくなったのだから、

そりゃー、さすがに気づくか。






バレてしまってから、

病院に３人で行った。






診断の結果、

私のこの声の出ない症状は

「ストレスによるものですね。所謂、失声症です。」らしい。






その日から、ママとパパは仕事をたびたび休んでは、

私が心を開くことができる臨床心理士・カウンセラーを探した。




不登校・引きこもり・失声症

世間体では、否定されるべき人間だ。

だからこそ、心配が募り仕事を休んでまで、探したんだと思う。







何度も、色んな心理士関係の人が私の部屋のとびら前で語りかけてきた。

半分耳を傾けて、

でも、心を開くなんてことはしなかった。




だって、心を開いて、

奏の存在を話したとして、

その人たちが天国から奏を連れてきてくれるわけじゃないから。



ママ達には罪悪感があったけど、

心を開くことはなかった。









すると、また悲劇が起きた。

ママとパパが亡くなった。









その日は、雨が降っていた。

ママとパパはその日、私に会うカウンセラーを探して、

また外出した。









夜になっても、

１階からママとパパが生活している音が聞こえないから、

不思議に思って、

２階の自室から１階のリビングにいた。



すると、玄関の扉が開いて、

入ってきたのはママの弟・煌君だった。








煌「A。久しぶり。
急だけど、これから一緒に暮らそうか。」







それが煌君の第一声だった。

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