ゆびさし空 3rd zone

☆ ページ8

この町で１番の花火大会らしいから、人がとにかく多い。






男の子が固まって、射的に夢中になっていたり、

女の子は女の子で、りんご飴やらかき氷やら買って喋っている。





あまりなじみのないお祭りの雰囲気に圧倒される。







壱「めっちゃ、暑いな…。」


『じゃかいよ…。』






さすが夏と言いたくなるような気温。

歩いているだけで、汗ばんでくる。






ゆっくり歩く私たち２人のスピードは、

なんだかこそばゆかった。



だって、壱馬が柄にもなく、いつも以上に気を遣って

私に何もかもを合わせてくるから。





……なんか、照れるっちゃけど。






壱「りんご飴、食べる？」


『え？あ、うん！』





頷いた私に笑ってみせて、壱馬が真っ赤なりんご飴を買ってくれた。




差し出されたりんご飴が可愛くて、嬉しくて……、

どうしようもない気持ちになった。







『ありがと。』


壱「ん！おいし？」


『うん、甘いね…。』


壱「え、甘いの嫌いやった？
ごめん、買わんでよかったのに。」


『ちがうよ、嫌いじゃない。
むしろ、好きやよ！』







私のお母さんは、チョコレートが大好きで、

いつも仕事がひと段落したら、「ご褒美！」って言って、

普通よりちょっとお高めなチョコレートを買って、一緒に食べていた。


そのせいか、私も甘いものが大好き。






壱「なら良かった！
……あ、そうや！
甘いもの好きなんやったら、今度お菓子いっぱい学校に持ってきちゃるが！」


『い、いいし！太るもん！』


壱「いや、Aはもうちょっと太った方がいいって。」


『意味わからんちゃけど！』





女の子に「太った方がいい」って言えるその神経、

くっそ疑うわ、ばかずま！







私が怒ると壱馬はすぐ笑う。





……そんなに笑っても、何も出てこんのに。

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