ゆびさし空 3rd zone

☆ ページ23

北「泣かんでよ…。」




けんかしたあの頃とは違う。

今泣いているのは、私だけ。


私よりも大人になっている北ちゃんは、

優しく涙を溶かすように、目、それから頬へとキスした。







『……北ちゃんのキス魔。』


北「Aの泣き虫。」






すねたように北ちゃんを見て、目が合うと、

2人同時に笑いだす。







たくさん泣いたらすっきりした。






君を想うと、想いがいっぱいで、胸が張り裂けそうになる。


愛が、いっぱい。







ベンチの上で、手をつないでまたキスをした。


……何度目のキスだろう。







数え切れなくなったころには、日付が変わっていた。







北「帰りたくないな……。」







言ったのは北ちゃんで、すごく嬉しくて。


でも、もう帰らなきゃいけない。



名残惜しくおろしていた腰を上げ、手をつないだ。








言葉は分からなくていい。


真実も分からなくていい。





胸いっぱいで、今はいらないから。




好きな人と時間を忘れて、一緒にいれたこと。


好きな人からのキスがこんなにも幸せなことを知った。








北「……あ！言い忘れっちょった！」


『ん？なんがね？』


北「Aの浴衣姿、てげ可愛い！」









……なんて、無邪気に笑うから。


いろんなことは後回しでいいかな。

この生まれて初めての幸福感に今は、浸っていたい。









星空の下で、

私は久しぶりに心から笑えた気がした。

☆→←☆

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す