ゆびさし空 3rd zone

☆ ページ22

震える唇を離したあと、

緊張したように北ちゃんの顔を見上げた時。





…花火が終わった。

ギュッと握る手に力がこもる。




嬉しくて、でも、切なくて。

好きなのに、想いは届かなくて。

キスしたのに、寂しくて。






この行為に意味を求めてはダメなのはわかっている。




あの頃より大人になったはずなのに、

どうして気持ちをストレートに言えないんだろう。





目の前に好きな人がいる。


だったらそのままそう言えばいいのに、言えない。




北ちゃんには大切な人がいると、分かっているから。

伝えて、拒否されるのが、怖いから。







……分かってる。







いつからそんなに物分かりがいい人になって、

いつから自分の気持ちを押し殺すことが

「正しい」ことだと思うようになったんだろう。






欲しいものがあるなら、手を伸ばしたい。




そう素直になるにはどうしたらいいんだろう。








『北、ちゃ、…ん。』






名前を呼ぶと遮られるようにキスをされた。


酔いしれるように目を閉じて、

北ちゃんのＴシャツの左胸辺りをキュッと握った。







どうしよ、好きすぎる。






美海ちゃんがいるとか、傷つくとか、

自分の過去とか、こんな甘いキスをされると

ごちゃごちゃしたことが一気にどうでもよくなる。







……好きなんだよ。






足元をすくわれて溺れるように、

息ができないような苦しい恋。








もう10年は想ってる。

泣ける。








北ちゃん。

大好きやよ。








あなたの彼女になりたい。

あなたの隣にずっと居たい。

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