ゆびさし空 3rd zone

☆ ページ15

『お母さんはなんにも悪くないと……。
私、アイツのことが憎くって嫌いで…死んじゃえばいいって思ったの。
それでね、包丁、……握っちゃったの。』


北「…。」


『そしたらね、お母さんが私が持ってた包丁取ってさ…』








お母さんは私をかばって、アイツを殺し、自分も死んだ。


まるで、刑事ドラマの撮影に参加したみたいで…

雨が降ってて、血がアスファルトに広がっていった。








『わ、私が…あの時、アイツを殺そうなんて思わんかったら、
お母さんが包丁なんか持つこともなかったとに！
……私のせいだよ、全部全部！

私が…………お母さんを殺した…。』








私の中の何かが壊れたように、いきなりあふれ出す憤り。







あの時、あの瞬間。

アイツを殺そうって、全て終わらせようって思わなかったら…、

お母さんはまだ、私の隣で笑っててくれてたかもしれない。

…生きていたかもしれない。



そしたら、別の未来が待っていたかもしれない。

私が壊した。

お母さんの幸せも、未来も。




お母さんが死なずに、私が泣かずに生きられる方法があったかもしれないのに。




それなのに、私は。

お母さんがアイツをさしたあの瞬間、安心してしまった。


ホッとしたんだ。やっと、解放されるって。

これで、幸せになれるって。




すぐに自己嫌悪に陥ったけど、一瞬でもそう思った私は…最低最悪だ。








『私が………壊した。』


北「A。」


『私が全部悪いと。』


北「A。」








私が今苦しいには、紛れもなく私のせい。

だから、人に頼るなんてあっちゃいけない。

そんなこと、許されるはずない。


許されるわけない。






『消えたいよ…北ちゃん……。』





感情も、何かを考える頭も、なにもかもいらない。






いっそ、

死んで楽になりたい。









北「Aは、生きてよ。」









その北ちゃんの言葉に顔を上げた。



月明かりに照らされて、北ちゃんの目元が潤んでいるのが分かった。

今。気づいた。







………北ちゃんが、泣いている。

☆→←☆

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す