☆ ページ33
元父「さっさ、金もってこんか!」
『もう、……帰って』
その日もあの人は、お母さんと私に暴力を振っていた。
家の中は荒れ果てぐしゃぐしゃ。
酒や金を存分に楽しんだあの人は満足して玄関で靴を履いている。
その時、こぼしてしまった。
本音を。
『いなくなれ』
それを聞いたあの人は、
元父「はぁー?ふざけんな!
お前らは一生俺から逃げられない。
お前のお母さまが折れたら
次は、お前だ!」
そう言って出て行ったあの人。
愕然とした。
私は一生、あの人もの?
死ぬその日まで、地獄見んないかんの?
心がストンと体から抜け落ちたような感覚だった。
生まれて初めて持った殺意は…
酷く静かで憎いものだった。
キッチンに行き、包丁を。
母「A?
なにやってるの?
………やめなさい!」
『…っ!いやだいやだ!
アイツに生きる価値なんかない!
だかい、私が!』
泣き叫ぶ私。
私がやらないと終わらない。
私が終わらせる、何もかも。
こんな毎日。
終わらせたい。
アイツのために一生を棒に振りたくない。
…私も幸せになりたいっ!
母「いかん!
Aの人生に泥塗りたくない!」
お母さんがすっと私から包丁を奪った。
そして、笑った。
『お、お母さん…?』
何してんの?
母「これは、お母さんがすること
ねぇ、よく聞いて。
いい人に巡り合って幸せになって?
お母さんはダメだったけど…Aならできる
いい人と出会って、その人を愛し愛されなさい」
そう言うと、静かに家を出て行ったお母さん。
ダメ、お母さんを追いかけなきゃ!
そう思って、お母さんの後を追った。
でも、手遅れだった。
遠くで、アイツが倒れたのが見えた。
何度も何度も。
そして、自分も静かに倒れた。
その日を境に学校でいじめられた。
【殺人親の娘】ってことで。
泣いた。
最悪だ。
この時ばかりは、北ちゃんの魔法も効かなかった。
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作者名:ゆめゆめ。 | 作成日時:2018年10月14日 10時