☆ ページ11
卒業証書を握りしめて、もう、二度と歩くことのないであろう道を一人で歩いた。
そして辿り着いた、私が住む古くてぼろいアパートの階段をのぼる。
…早く、壊せばいいのに。
サビついていて、のぼるたびに音を立てる階段にそんなことを思う。
ふとその時、井戸端会議中の近所のおばさんたちが、帰ってきた私を見て、コソコソと噂しているのにきづいた。
〈ほら、例の星川さん家のお嬢ちゃんよ〉
〈あ!あの…?〉
〈そうそう!両親が心中したとかいう…〉
〈うんうん。でも…まだあそこに住んでるのね〉
〈ほんとに思うわ〜。心中なんかした家庭の近くに住む人のこと考えてよってね〜?〉
進めていた足を止めて、おばさんたちをにらみつける。
その私の視線に気づいたおばさんたちは、サッと逃げるように自分たちの自宅へ帰っていった。
…やっぱり、人間って他人の不幸が好きみたいだね、お母さん。
学校もご近所もどこも一緒。
あきらめのため息をついて、家の中に入った。
凄く散らかっている狭いアパートの2階。
散らかっているというより
…荒らされたような。
と言ったほうがいい感じなんだけどね。
「……っ……。」
ついこの間起こったあの夜の出来事を思い出し、息苦しくなって胸を抑える。
制服を脱ぎ捨てて着替え、まとめた荷物を持って、すぐに家をでた。
…もう、この家には戻らない。
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作者名:ゆめゆめ。 | 作成日時:2018年10月14日 10時