放物線軌道~アネモネの花~ (ページ21)

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予行練習ページ21

月島｢最悪土下座という手もありますね。｣
何とか説得して平常運転に戻したものの
マイナスな意見ばかり出てくる。大丈夫かな。

｢何とかなるよ、大丈夫。｣
自分と月島くんにそう言い聞かせた。

月島｢じゃあ、散歩行きます？｣
｢うん、行こうか｣
そう言って手を差し出すと、
月島くんはきょとんとした。

月島｢何ですか？｣
｢練習に手つなごうと思って。｣
月島｢あ、はい。｣
納得して手を握ってくれた。
京治の手よりも大きくて、暖かい。

昇降口までの道を歩く。
月島くんは歩幅を合わせて歩いてくれた。

｢ごめんね、先輩のわがまま聞いてもらって。｣
月島｢…僕は、ケーキが食べたいだけなので。｣
｢ありがとう、｣
月島くんは顔には出さないけど優しい。

月島｢…赤葦さんのこと嫌いになりましたか｣
｢本当に浮気してるなら、少し嫌い。｣
月島｢正直どっちだと思いますか｣
｢してるんじゃないかな、私のこと一目惚れだって
言ってくれたけど、クラスにも可愛い子いるし、
私、京治のこと体育館で見て初めて知ったの。
それまで京治のこと知らなくて。
光太郎とは幼なじみだけど、そういう話はあんまりしなくて。あ、色々理由があって、私が…｣
月島｢もう、大丈夫です。｣
月島くんはきっと察したのだろう。
私が、不安であることを。

丁度昇降口に着いて、手が離れる。
お互い靴を履き替えて外に出た。

出かけるのには丁度いい天気で、
私の気持ちとは正反対の明るさだった。

事務室に外出届を出してから校門の外に出た。

月島｢手、繋ぎます？｣
｢いいの？｣
月島｢さっき繋いでたんで、嫌なら別に…｣
月島くんは顔を逸らした。
さっき離れた手をまた握り直して、
近くの公園に行くことにした。

本当にすぐ近くで、
あっという間に着いてしまった。

月島｢あの、｣
入ろうとすると、月島くんは、
立ち止まって少し手を引いた。

｢ん？｣
月島｢何で赤葦さんと話さないんですか｣
｢聞けないの。好きな人だから。
聞きたくないの。なんて言われるかわからないから。｣
月島｢不安ですか。｣
｢不安だよ、すっごい。
でも、京治は優しいから。
月島くん…蛍くんや黒尾さんみたいに優しくて
温かいから、きっとオブラートに言うと思う。
でもさ、そういうのってこんな状況で言われたら
言い訳にしか聞こえないじゃん？
信じてあげたいけど…｣

月島くんはただ、話を聞いてくれた。