放物線軌道 (ページ10)

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変わらないものページ10

木兎｢A、お、俺のこと好きだったの…！？｣
急にあたふたし始める木兎。
A｢ずっと好きだったのに。
あの人が私に命令してきて…それで…｣
呼吸が苦しくなる。
思い出したくない、って体が拒絶する。

木兎｢A…！？
過呼吸になってんぞ、深呼吸してみろ。｣
そう言って背中をさすってくれた。
体調が悪かったり、いつもと様子が違うと
すぐ気づいてくれる。
そんな彼が好きで、ずっと一緒にいた。

なのに。

A｢ごめんなさ…｣
急に気道が楽になり、咳き込む。

木兎｢母ちゃんのオムライス食って元気だせ！
大体分かったからもう無理すんな。｣
A｢うん。｣

小さい頃みたいに彼は自然と私の手を握った。
冷え性の私とは正反対で暖かい手の温もりを
密かに感じながら暗い夜道を歩く。

木兎｢それで、下の名前で呼んでくんないの？｣
A｢んー…呼ぼうか？｣
嫌な思い出は忘れて、また昔みたいに。
呼べば忘れる、そう信じて。

木兎｢呼んでくれんの！？｣
A｢いいよ、呼んでも。｣
木兎｢じゃ、早速！！｣
餌を待ち構える犬のように待つ彼。
そんな彼がなんか愛おしくなって。
こういう所も好きだったんだっけ。

A｢なかなか呼べなくてごめんね、光太郎｣
木兎｢久々にお前の光太郎聞けた！！
これからも光太郎って呼んでくれよ！！｣
いつもに増してご機嫌な光太郎。

すれ違う人から見たらカップルに見えるのかな…

もう少し早くこうなっていたかったなと
心の底から思った。

木兎｢着いた～｣
A｢お隣だけど久々～…｣
木兎｢時々おすそ分け持ってきてんじゃん｣
A｢中には入ってないでしょ！笑｣
木兎｢あ、そうか！｣
それはそれは、と言いながら
玄関のドアを開けてくれた。

木兎の母｢あ～！Aちゃん！いらっしゃい！｣
わざわざリビングの方からパタパタと駆けてきた
木兎のおばさん。

A｢おばさんこんばんは～。
いきなり来ちゃってごめんね…｣
木兎の母｢いいのよ～。
Aちゃんは家族みたいなものだし、ね？｣
木兎｢そうそう。いつでも来ていいんだぞ！！｣
A｢うん、ありがとう…！｣

木兎の母｢泊まってもいいのよ～？｣
木兎｢俺の部屋来るか！？｣

木兎家はいつもこんな感じ。

A｢じゃあ、泊まっていこうかな。｣
丁度帰りたくないって思ってたし…。

木兎｢よーし決まり！母ちゃんオムライス！｣

2人の後を私はついて行った。