放物線軌道

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私も、彼も。ページ8

木兎｢よっしゃー終わったー！｣
鍵を閉め、木兎が伸びをした。

赤葦｢お疲れっしたー｣
A｢お疲れ様です。｣
木兎｢A、一緒に帰ろ！！｣
赤葦｢俺も途中までいいですか｣
A｢いいよ～。｣
2人に挟まれて夜道を歩く。

A｢木兎はお隣さんだけど
赤葦くんはどこに住んでるの？｣
赤葦｢俺は２駅隣です。｣
A｢そんなとこからわざわざ…！？
木兎のせいで夜遅いし…｣
赤葦｢そこまで遠くないですよ。笑
電車で5分もしないくらいですし。｣
A｢でもやっぱ大変だよね。
毎日木兎の世話してくれてありがとう。｣
木兎｢俺が赤葦の世話してるの！！｣
それは絶対嘘。
赤葦｢俺がいつ世話されたんですか。｣

そんな他愛もない話をして駅に着く。

木兎｢やべ、俺忘れ物した！！
A、先帰ってて！！｣
そう言って木兎は来た道を引き返した。

A｢もう仕方ないなあ。｣
赤葦｢木兎さんらしいですね。｣
2人で木兎が見えなくなるまで見て、
ため息をついた。

A｢じゃあまた明日ね赤葦くん。｣
そう言うと赤葦くんは少し悲しそうな顔をした。
まるでもう会えないかのように。

A｢あの…赤葦くん？｣
下唇を噛み締めて、俯く彼を覗き込む。

赤葦｢Aさん、わがまま言ってもいいですか｣
赤葦くんもわがまま言うんだ、と
なんか新鮮な気持ちになった。

A｢はいっ、どうぞ。｣
赤葦｢さっき恥ずかしくて出来なかったんですけど
俺もぎゅってしていいですか…？｣
彼を見ると顔が真っ赤。
袖で口元を隠す仕草がなんか可愛い。

A｢はい、どうぞどうぞ。｣
私が両手を広げると、
子供のように抱きついてきた。

ふわふわして、あったかい。

赤葦｢木兎さんばっかずるい…｣
A｢なに？｣
赤葦｢何でもないです。｣
本当は聞こえてた。
赤葦くんも甘えたかったのだろう。

A｢赤葦くん、電車来るよ…？｣
時計を見ればあと5分。

離す気配がなく、少し戸惑う。

赤葦｢昨日、俺のこと見てたでしょ。｣
気づかれてはいないだろうと思ったが
そんなはずもなく。

A｢気に触ったならごめん…｣
彼を抱きしめる力が少し強くなる。

赤葦｢本当に？木兎さんじゃなくて？｣
A｢赤葦くんのこと見てた。
すごい綺麗なトスで好きだなあって…｣

彼は少し黙った。

赤葦｢…それって期待してもいい？｣

耳元で囁く君の声は少し意地悪に聞こえた。