放物線軌道 (ページ13)

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知らない方がよかったって。ページ13

A｢おばさんお風呂どーぞ！｣
木兎の母｢うん。ありがとう。
熱くなかった？｣
A｢うん、大丈夫！
光太郎のスウェット借りていいの？｣
木兎の母｢いいのよ～。
そのスウェットもう入らないみたいだし…｣

私には全然大きいのに。
光太郎、成長してるんだ。

A｢そっか、じゃあ借りるね。｣
木兎の母｢どうぞ～｣

濡れた髪をタオルで拭きながら階段を上がる。

A｢上がったよ～｣
木兎｢おー！上がったか！！｣
嬉しそうに手招きをしてくる。

いつも通り彼の隣に座る。
A｢光太郎髪ぺったんこ！｣
そういって木兎の頭を撫でる。

木兎｢ちょ…待って…くすぐったい！｣
光太郎に手を掴まれる。
A｢あ…ごめん｣
光太郎は俯いたまま手を離してくれない。

A｢光太郎…？｣
腕を引かれ、抱きしめられる。

木兎｢ごめん、このまま居させて。｣

なんかさっきと様子が違う…
A｢光太郎何かあった？｣
その言葉にビクッと反応する光太郎。

木兎｢何も…ない。｣
そういって首を横に振る光太郎。

A｢絶対あったよ。わかるもん。｣
木兎｢じゃああった。あったから聞くけど…｣
A｢うん。｣
木兎｢赤葦の事好きなの？｣
声のトーンが急に変わり、低くなった。

A｢え…？｣
何で…分かったの。

木兎｢ねえ、好きなの？｣
A｢そんな訳な…｣
そんな訳ない、と嘘を付こうとした。

木兎｢駅前でぎゅってしてたんでしょ？｣
何で光太郎が…

A｢何で知って…｣
木兎｢なに？図星？｣
なんか光太郎おかしい…。

もう何言っても光太郎に通じない。
そう思って、
A｢光太郎には関係ない…っ！！｣
そう言い放った。

木兎｢関係ないけど…お前のこと好きだから…｣
光太郎は子供のように涙を流した。

言い過ぎた。
私、最低だ。

A｢ごめん…言い過ぎた…。｣
木兎｢いい。もう寝る。｣
そう言って光太郎は布団に潜り込んだ。

A｢光太郎…｣
返事はなく、ただ嗚咽する声が聞こえる。

気まずくて、少し頭を冷やそうとベランダに出た。
まだ少し冷たい風が心地よい。

夜空とは言い難いほどまだ少し明るくて
でも、静かで落ち着く。

しばらく空を見上げて、ぼーっとしていると
ズボンのポケットに入れていたスマホが振動した。

誰だろう…。

表示されるのは知らない番号だった。

悩んでいても仕方ないと通話ボタンを押した。