職場体験当日 ページ45
「コスチューム持ったな、本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ。落としたりするなよ」
待ちに待った、職場体験当日。一同は雄英の最寄りの駅に集まり、そしてそれぞれ出発となる。
「くれぐれも失礼のないように!じゃあ行け」
私は消太に軽く手を振って別れを告げた。
それにしたって気になるのは飯田天哉のことだ。
風の噂で聞いたが何でも保須…ヒーロー殺しの出没した地域の事務所に行くらしい。
出久も麗日も気になるようで、背を向けて歩き出す彼を見ていた。
「飯田くん…本当にどうしようもなくなったら言ってね。友だちだろ」
そう語りかける出久の隣で麗日がしきりに頷いていた。私の胸もまた騒ぎ始める。
「ああ」
そう、切なげに笑う飯田天哉の姿は、どこかで見たことがあった。それに。
(…!?)
胸騒ぎが、止んだ。その代わり、頭が燃えるように熱くなった。手が勝手に、爪が肉に食い込むほどに強く握りしめられる。
この感覚は以前一度、身に以って感じた。
そう、これは。
(消太が、死柄木弔に傷つけられた時に感じた…)
“怒り”だ。途方もない。
「…ッ」
胸騒ぎが加速する。
本当に飯田天哉は大丈夫なのか?
(もし、消太があの時、死柄木に…)
私が想像したような目に遭ったら。
私は今の彼と同じような心情になるのだろうか。
それとも、ヴァンパイアだから、何も感じないのだろうか。
消太が無事に帰還した今だからこそそれはわからないが…
(後者であったなら、それはきっと、とても悲しいことなのだろうな)
これから職場体験だというのに私の気分は、まるで池に投げ入れられた石のように沈んでいった。
「轟?」
前方を歩く紅白頭に声をかけるとその人物は徐にこちらを振り返る。
「Aか」
「そう、A。偶然ね、君もこっちの線?」
「ああ」
私たちはその会話を最後に同じ電車の同じ車両に乗った。というか、隣に立った。
「…そういえば、呼称を変えた?」
先ほど名前で呼ばれた。つい先日まで苗字で呼ばれていたはずだったが。
「悪い。嫌だったか?」
「別に?好きなように呼べばいい」
血の繋がった姉弟とわかってから、正確に言えばあの日母の見舞いに行ってから、妙に轟の態度が柔らかくなってきた気がする。
「焦凍」
「!」
「ヒーローデビューしたらそう呼ばれるようになるのね、お互いに」
私はそう言ってほくそ笑んだ。また、歪なものだったが。
目的の 駅まであと少しだ。
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サラ(プロフ) - 未戳さん» お褒めいただき光栄にございます!楽しみにしていてください。 (2016年11月4日 22時) (
レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
未戳 - 今まで読んだ作品の中で一番面白いです!毎回楽しみにしてますよ!! (2016年11月3日 11時) (レス) id: e8817cfbda (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - ももタ郎。さん» ありがとうございます！是非とも頑張らせていただきます! (2016年10月11日 22時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
ももタ郎。(プロフ) - 続編おめでとうございます！応援してます！ (2016年10月11日 22時) (レス) id: 222ce333cf (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - リズさん» ありがたいです!是非とも頑張らせていただきます! (2016年10月10日 20時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラ | 作成日時：2016年10月10日 15時
