山頂 ページ43
結果を言うと、駆けっこは私が勝った。
けれど、そんなことどうでもよくなるくらいのものが、山頂には広がっていた。
「…あぁ」
柵の向こうでは、全てが一望できた。遠くには街も見えた。森も見えた。
「…案外、簡単なことなのかも、な」
自然と人。それらは互いにいがみ合っているように見える。けれど、風景の中でそれらは確かに共存していた。
なら、人間とヴァンパイアはどうなのだろう。
「それは楽観的すぎる、か」
荒れた呼吸と騒がしい足音が後ろから聞こえる。勝己が着いたんだ。
しかし、振り向いた途端視界をリュックサックが遮った。
何とか顔面直撃は避けられたが、いきなり投げつけてくるなんて酷い話だ。
「てめぇ!俺のこと途中から忘れてたろ!!」
「?好き勝手やれと言ったのは君じゃないか…」
「限度ってもんがあんだろうが!!軽く一時間は走りっぱなしだったわクソアマ!!」
一時間?私は携帯を見て確認する。確かに一時間は軽く超えていた。
勝己が珍しくあんなにも息を切らしている理由がわかった。
「ごめん」
「…ったく、メシにすんぞ。
鞄開けろ、そこに入ってる」
意外にも簡単に許してくれたことに多少驚く。
リュックサック越しの勝己の表情は、何となくだが、穏やかなものに感じられた。
リュックサックの中から弁当箱を取り出した。
少し乱雑に握られたおにぎりが10個ほど入っていた。勝己が握ってくれたのか、教えてはもらえなかった。
「そういえば、勝己。まだ教えてもらってない」
「あ?何が」
「何故、私を今日誘ったのか」
尋ねれば、勝己は黙りこくってしまった。まるで地雷を踏んでしまったかのようだ。
「…職場体験」
やっと口を開いて、出たのはそんなことだった。
「一週間空くだろ。その間、メシはどうすんだよ」
ああ、なるほどな。私は納得して説明する。
「山とかに行って、獣を探して…そこから血を取る。それを持ち歩くようにしてるけど」
「どっかの知らねー野郎に見つかったらどうすんだよ」
「その時は…そいつに忘れてもらうしかないな」
「てめぇ意外と無計画なんだな」
小馬鹿にされたように鼻で笑われる。
その後、勝己は突然自分の衣服のボタンを外し始めた。
あっという間に、彼の白い肩が晒された。
「喰えよ。今なら誰もいねぇし」
ああまたこれか。
私は忘れていた自分たちの関係を思い出した。
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サラ(プロフ) - 未戳さん» お褒めいただき光栄にございます!楽しみにしていてください。 (2016年11月4日 22時) (
レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
未戳 - 今まで読んだ作品の中で一番面白いです!毎回楽しみにしてますよ!! (2016年11月3日 11時) (レス) id: e8817cfbda (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - ももタ郎。さん» ありがとうございます！是非とも頑張らせていただきます! (2016年10月11日 22時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
ももタ郎。(プロフ) - 続編おめでとうございます！応援してます！ (2016年10月11日 22時) (レス) id: 222ce333cf (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - リズさん» ありがたいです!是非とも頑張らせていただきます! (2016年10月10日 20時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラ | 作成日時：2016年10月10日 15時
