自由の象徴 ページ42
目の前で笑うAにこれ以上ないくらい惹かれていた。もし、理性が働いていたらそいつは今の俺の頬を引っ叩くだろう。
けれど、それぐらいに今の女の微笑みは柔らかくて美しかった。
以前の戦闘訓練の後に見せた、あの不気味な笑みと違って。
「知らねぇよ」
つい口を突いて出てきた言葉が、それだった。
Aがアホみてぇに目を丸くする。
「てめぇには好き勝手やってもらわねぇと俺の調子が狂うんだよ」
こいつはいつもそうだった。初めてあった時からずっと。
木偶の坊のデクなんかに話しかけて。
いつも俺を無視してどっか行って。
「血ィ吸わせなきゃ、てめぇは好き勝手やれねぇだろうが」
こいつ本人から聞いた。
もし血に飢えたら、こいつを待つのは理性を失った怪物だ。
それだけじゃない、体育祭で垣間見たあの弱々しい姿を。
そんなのこちとら願い下げだ。
こいつには奔放に生きていてもらいたい。
何故だかわからないがそう思った。
俺が焦がれてんのは、どこにも誰にも、俺にも縛られない、自由気ままなこいつの生き様だった。
「そう、か」
俺の気持ちを毛ほども理解していないようで、Aは何とも言えぬ表情で俺を見つめた。
「ほら、早よしろ。日が昇っちまうだろが」
前をまた向こうとするが、その前にAが行動を起こした。
いきなり靴を脱ぎ出したかと思えば、急に裸足になったのだ。
靴を片手にAは一瞬の内に近くの木の枝に降り立つ。
「好き勝手やっていいんだな!?じゃあそうする!
どっちが先に山頂に着くか競争だ勝己!!」
「てめ、勝手に決めてんじゃねぇよ!」
Aは枝を伝って林を跳びまわった。
俺も後をついて走り出す。
まるで体育祭の障害物競争の時のようだった。
負けたくねぇ。
いつの間にか火が点いて、俺も体力切れを忘れ山道を全力疾走していた。
でも、目だけは枝の上を自由に駆け回るAの姿に釘付けだった。
(あぁ、なるほどな)
何で自分が彼女の自由に固執するのか、理由がわかった気がする。
彼女は自分の身近な、唯一柵に囚われない人物だったからだ。
自分の言うこともろくに聞かない、自分の思い通りにならない唯一の存在。
俺の中では、あいつこそがきっと“自由の象徴”なんだろう。
だから、あいつがそうでなくなった時には…。
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サラ(プロフ) - 未戳さん» お褒めいただき光栄にございます!楽しみにしていてください。 (2016年11月4日 22時) (
レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
未戳 - 今まで読んだ作品の中で一番面白いです!毎回楽しみにしてますよ!! (2016年11月3日 11時) (レス) id: e8817cfbda (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - ももタ郎。さん» ありがとうございます！是非とも頑張らせていただきます! (2016年10月11日 22時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
ももタ郎。(プロフ) - 続編おめでとうございます！応援してます！ (2016年10月11日 22時) (レス) id: 222ce333cf (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - リズさん» ありがたいです!是非とも頑張らせていただきます! (2016年10月10日 20時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラ | 作成日時：2016年10月10日 15時
