名付け親 ページ37
それよか、自分の名前をつけるのが最優先だったということに今気づいた。何とか頭の中を巡らすがいいものなど出てきはしない。
(そもそも、この名前も…)
『まだない。そうだな、Aとでも呼んでくれないか』
(そうだ、私には名付け親がいない)
あの時は消太に聞かれたから、とりあえず仮の呼称を提示しただけだった。
今思えばそれが始まりだった。
「爆殺卿!!」
「違うそうじゃない」
再考を終え(それすら駄目出しを食らった)、勝己が苛だたしげに自分の席へとまた戻っていく。
一方こちらは再考すら食らっていない。心なしかミッドナイトの視線が刺さる。
(…名を付けることでイメージが固まる、か)
正直そんなこと言われたところで未来の自分など想像もつかない。
(なりたい自分、ね)
ヒーローを志したきっかけは、『あるべき人の姿であること』だった。
あの日、出久が勝己を助けに誰よりも速くヘドロへと飛び出していった時に、彼の目指す先に行けば、『より人間らしく』なれると思った。
だから、ここにいる。
人間に明かせば歪んでいると評されるだろう考えかもしれない。けれど、そうすることでしか私という命は生きていると認められないと思う。
(けれど、認めてくれた奴もいる)
あの日、勝己が私の新たなる共生者となってくれた日。
正直嬉しかった。同時に寂しくも思った。
消太以外で唯一私の理解者が出来たと思ったから。それと同時に、もし彼が私の元から離れるようなことがあったら、そう思うととびきり不安になった。
完璧な依存性だ。
コンッ。
「…?」
頭に何か当たった。誰かが私に向かって投げて来た、床に落ちたそれを拾う。随分とクシャクシャに丸められたその紙片を広げてみると。
「…!」
そこに書いてあったことを見て、私は完全に決意を固めた。私は急いでボードに文字を書き殴る。
「書けたなら、持ってきてちょうだい」
ミッドナイトに言われる前から私は腰を上げていた。
ボードが教卓を乗っかる。
「“A”、です。これ以上でもこれ以下でもないから」
「名前…貴女には特別な意味がありそうね」
ナンセンスだと思われるかもしれないし、考えつかなかった果ての名前だと思われるかもしれない。
けれど、それでも構わない。
『おまえにはこれぐらいでちょうどいいだろ
A』
紙片の送り主が、私のたった一人の名付け親が、私を見ていたから、私もそちらに向かってそっと笑みを返した。
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サラ(プロフ) - 未戳さん» お褒めいただき光栄にございます!楽しみにしていてください。 (2016年11月4日 22時) (
レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
未戳 - 今まで読んだ作品の中で一番面白いです!毎回楽しみにしてますよ!! (2016年11月3日 11時) (レス) id: e8817cfbda (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - ももタ郎。さん» ありがとうございます！是非とも頑張らせていただきます! (2016年10月11日 22時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
ももタ郎。(プロフ) - 続編おめでとうございます！応援してます！ (2016年10月11日 22時) (レス) id: 222ce333cf (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - リズさん» ありがたいです!是非とも頑張らせていただきます! (2016年10月10日 20時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラ | 作成日時：2016年10月10日 15時
