告白 Side.Protagonist ページ20
「…もし、仮に私が君の言うヴァンパイアだったのなら…どうする気だ?」
私は長い沈黙を破ってそう口にした。
喉が渇いて、言葉を出すことすら困難だったからだ。
「別にどうもしねぇよ。俺からてめェに対して何かあるわけでもねぇからな」
いつもと打って変わって冷静な勝己に、ひどく戸惑う自分がいた。
…いや、違う。迷っているのだ。私は。
秘密を打ち明けるか、打ち明けまいか。
彼は私にとって特別な存在だ。少なくとも私はそう思っている。
彼がいたから、私は今日オールマイトの言ったような、真摯な心構えを作れたのだから。
今の私がいるのは、目の前にいる勝己のおかげと言っても過言でない。
同時に、今まで築いてきた秘密の檻を壊すのも、私には躊躇うものがあった。
…そもそも、どうして躊躇する必要があるのだろう。
命の危険性があるから?
勝己は私の秘密を誰かに売ったりするだろうか。
「…私は」
しばらく、いや、大分考えあぐねた結果、私はついに腹を決めた。
「かなり数奇な運命を辿っている、から、大分長い話になると思う」
私の今までの生涯を物語とするならば、冒頭はまずこうだろう。
ある時、感情の欠如した醜い“個性”の少女が生まれた…。
それから私は全てを語った。
特異な誕生、消太との歪な親子関係や吸血の際に伴う苦痛と快楽。
今はどこかにいるやも知れぬ母と兄弟の話もした。
今までずっと忘れていた過去だった。
今思えば、私が最も思い出したくなくて封印していた過去だったのかもしれない。
私は思い出してしまったのだ。
『…何だこれは!』
『…うと…しょうと…ひょうか…』
『…じ!…たいの…!』
『どうにかしろ!それでも医者か!!』
『…轟くんて誰かに似てると思ってたんやけど、そうだ!』
Aちゃんに似とるんよ!
どうしてこんなにも大切なことを忘れてしまっていたのだろう。
私が見たのは。
私の母は。
私の兄弟は。
「轟…」
頬を伝い流れ落ちた雫が、静かに床へと落ちていった。
何故あの時1人だけ逃げたのだろう。
それはきっと本能的にわかっていたからだ。
あそこでもし、あの男を父親と呼ぶ人生を辿れば、邪険にされ、兄弟のような末路を辿ることを本能的に知っていたからだ。
あぁするしかなかったのか。
「私は…怪物なんかじゃないのかもな…ただの臆病な腰抜けだ」
最終的に出た言葉がそれだった。
また、長い沈黙に入ってしまった。
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サラ(プロフ) - 未戳さん» お褒めいただき光栄にございます!楽しみにしていてください。 (2016年11月4日 22時) (
レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
未戳 - 今まで読んだ作品の中で一番面白いです!毎回楽しみにしてますよ!! (2016年11月3日 11時) (レス) id: e8817cfbda (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - ももタ郎。さん» ありがとうございます！是非とも頑張らせていただきます! (2016年10月11日 22時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
ももタ郎。(プロフ) - 続編おめでとうございます！応援してます！ (2016年10月11日 22時) (レス) id: 222ce333cf (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - リズさん» ありがたいです!是非とも頑張らせていただきます! (2016年10月10日 20時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラ | 作成日時：2016年10月10日 15時
