お世話になります ページ39
「今まで散々付き合わせた。今だってそうだ。これからもそうなるかもしれない。
でも、これは受け取っておいてほしい。友情の証として」
私は、生まれて初めて笑おうと試みた。
きっと、ぎこちなくて見苦しいものだったに違いない。出久がつい吹き出してしまう程度には。
私は固い口角に堪えられず口端を下げてしまった。それを見てますます彼は笑った。
「ごっ、ごめんね、でも、君が頑張ってくれてると思うと、すごく嬉しいんだ」
「そう思う?」
「うん、とっても」
出久は笑い声をやっと抑えて、微笑んでみせてくれた。
もし笑える日が来るというのなら、こんなふうに笑いたい。
そう思うほどに、その顔は綺麗だった。
「じゃあ、僕からも」
と、彼は学ランを脱いだかと思うと、その第二ボタンを縛る糸を食い千切って私に渡してくれた。
「受け取っておいてほしい。
親友の証」
それに僕のを欲しい娘なんていないだろうしね、と言いつつもそこに自嘲なんてものは一欠片もなかった。
手の平に転がる古いボタンが、煌めく宝石に見えた。
「…ありがとう。受け取っておく」
卒業式の、屋上でのこの思い出は、きっと忘れられないものとなるだろう。
そして、親友との、とても大切な第一歩だった。
「じゃあまた、気をつけてね!」
「うん、また雄英で…スカーフは見つからないように気をつけて」
私は屋上を降りて行った出久に手を振った。
振り返ったら夕陽があった。いつもなら何とも思わないその光景が、今はやけに綺麗に思えた。
(もう、私は此処の生徒ではないんだな)
そう思って、柵に手をかけた。
さて、これからどうするか。下を見ると、まだ男子がちらほらいて、校門も裏門もマークが厳しかった。暇な連中もいたものだ。
(水蒸気化するか…鳥になるには目立つしな)
獣化は可能だが如何せん、成長するとその分面積も大きくなるため、獣も巨大化する。
つまり、全身を千代鳥に化けさせるとなると、私の今の人間の姿に比例した大きさとなってしまうのだ。
力には欠点が、“個性”にはリスクが。
そうは上手くいかないようにできている世の中なのだ。
よし、水蒸気化で行こう、と思った時、階段から足音が聞こえたので身構えた。
(勝己?)
匂いでわかった、上がってくるのは彼だと。
強張っていた体を解いて、出入り口に寄った。
もしかしたら、そのまま気化して逃げても良かったのかもしれないけど。
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ハック - ぶつかりあえのところヒーロになっとる (2021年9月25日 22時) (
レス) @page29 id: 0c5e7e9ecb (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 時雨さん» はい、私もおもくっそ楽しみです。 (2017年1月6日 7時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 時雨さん» わぁお!!本当ですね、ご指摘ありがとうございます。 (2017年1月6日 7時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - 瞳孔じゃなくて同校じゃないですか？「恐るべし」の所 (2017年1月5日 23時) (レス) id: c6b79d49da (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - 夢主ちゃん可愛いぃぃぃぃ！家庭教師ヒットマンREBORNご存じなんですね！私エルドライブアニメ化楽しみすぎて寝れないです (2017年1月5日 22時) (レス) id: c6b79d49da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラ | 作成日時：2016年8月6日 17時
