満天の下で ※猥語 ページ45
中也は人気の少ないバルコニーまでAの腕を引いて、連れて行った。
其処にいたのは、星空を眺め、其の下で愛の言葉を吐き、其れを聞きたいとする若い男女ばかりだった。
「あれ、手前の電話番号じゃないだろ。誰のだ?」
Aが妖艶に微笑みながら、「広津さん」と答えれば、中也は今ここにいない彼を哀れむような表情を見せる。
今頃彼の元には下らない話を繰り出して来る若い男からの通知がたくさん届いているのだろう。考えただけで不憫な話だ。
「にしても二人の男に同時に連絡先渡すなんてよ...傍から見れば悪女だぜ、手前」
「いいの。私は強い男に支配されるよりは、強い男を支配したい」
「ケッ、」
本当に、この女に惹かれる男の気が知れないが、其の中に自分がいる事に中也は嫌気が刺した。
一体全体どうして自分はこの女に、其の手の意味で惚れ込んでいるのだろう。
外見は確かにいい。この前父親である首領が、『Aちゃんは生まれて来る時代が違ければきっと世界三大美女の内に数えられていただろうねえ』と惚気るくらいだった。
仕事ぶりも完璧だ。彼女は左遷された其の先でも上手くやっている。
ますます嫌になって来た。この女の何処を取って見ても短所は何処にも見当たらない。
悶々と考えていれば、悪女が急に態度を一変させた。
「...先日の件は、ごめんなさい」
悪女が一瞬にして仔犬のような手弱女へと一変した瞬間だった。
不覚にも中也はその姿に胸が高鳴ってしまう。
「別に気にしてねえよ。
それにこっちも悪かった。巫山戯た真似した連中にはちゃんと灸を据えといた」
「…違う。私は貴方に酷いことを言ってしまった。あんなことを言うなんてどうかしてた。
異能を上手く扱えなくて不本意に人を傷つけてしまったのは私だって同じなのに…」
「…?」
突然物憂げな光の差した顔は、着ているドレスも相まってまるで御伽噺に出て来る王女を思わせた。
けれど、昏くなった雰囲気を和ませようと思ったのか、彼女は素早く笑って取り繕った。
「小さい頃から人の心は読めてたから。変な言葉まで覚えちゃって」
「へえ…」中也は何気に柵に腰掛けた。Aも柵に寄りかかる。
「不思議なことに、陽の光の元で生きる人間も黒社会で生きる人間も、その思考は大体が偏ってる」
Aは屋敷の中を指差して…正確にはその中の者を指で示して、其々が何を考えているのかを当て始めた。
「セッ クス、セッ クス、自己顕示欲、愛欲…」
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サラ(プロフ) - 真昼ノ夢さん» 嬉しいコメントありがとうございます!今後も楽しみにしてください (2017年5月11日 1時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
真昼ノ夢(プロフ) - すっごく面白かったです!一気に読んじゃいました(*^^*)更新を楽しみにしています (2017年5月10日 22時) (レス) id: 91c8c67e41 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - kanameさん» うれしいコメント誠にありがとうございます…変換ミスやっちまったなあ… (2017年5月7日 20時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
kaname(プロフ) - スッゴク好みです( ☆∀☆)応援しています(^o^)vあと、25ページの君が黄身になってますよー (2017年5月7日 19時) (レス) id: e97e2f1677 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サラ | 作成日時:2017年5月6日 9時