我君ヲ ページ44
「いいえ、本当は父と来る筈でしたが生憎仕事が入てしまったようなので、代わりに父の職場の方と」
「そうですか。なら、ご一緒しても?」
その連れは男なんだが?
という言葉を呑み込んで、私はやんわりと断りました。というか『なら』、って何でしょう。
会話が噛み合っていないことに気づいてるんでしょうか?
しかしこれ又男はしつこく私と会話を続けようとして来ます。
「父君はどんなお仕事を?」
「ちょっとした組織を率いておりまして…」
彼は私などの口からポートマフィアという単語を聞いたらどんな反応を見せてくれるんでしょう。
もしかしたら腰を抜かすかもしれない。
そんなこと考えてるとも知らず、男はいけしゃあしゃあと続けてきました。
「貴女のような方の父君だ、さぞご立派な方なんでしょうね」
あんたは会って数秒の人間の中に何を見たんだと吐き捨てたくなる気持ちをぐっと堪え、いい加減離れようとしました。
しかしこれ又行く手を阻む者が。
「林さん!」
ゲェッ。
私の姿を見た瞬間駆け寄ってきたこの男は、以前作之助と仕事をしていた時、依頼を持ちかけてきたマフィアお抱え企業社長の御曹司の男でした。
その時私に一目惚れしたとか何とかで、それ以降四十マフィアを通じて連絡を寄越して来るのです。
それにしたってマフィア所属の女に惹かれるなんて本当にどうかしてます。
脳味噌の八割が腐敗してるんだとしか思えません。
「林さん、お久しぶりです。そのドレス、とても貴女に似合ってますよ。
あと以前した食事の話の返事をお聞かせ願います」
巫山戯るな、ありゃちゃんと断ったろうが。
その言葉をぐっと飲み込み、精一杯愛想笑いを浮かべます。
「お褒めの言葉誠に感謝します」
ああ、まずい。今の私は虎と蛇に挟まれたようなものだ。
どういなしてやろうと思っていた矢先に、救世主が現れました。
「今度是非一緒に…」私の肩に男の手が触れる直前、その魔手がパシリと払い除けられます。
「失礼、俺のものに勝手に触れないでいただきたい」
「…ちゅ、」中也。
「…何なんだ、君は!」
邪魔立てされた様子に、男連中は怒った様子でしたが、ここで騒ぎを起こされてはポートマフィアの名に傷が付きます。
私は瞬時に思い付いた作戦を実行しました。
「…あ、あの!これ私の連絡先です。是非今晩でもかけてくださいな」
私は言い寄ってきた男二人に揃ってメモを渡しました。
二人はそれで渋々引き下がっていきました。
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サラ(プロフ) - 真昼ノ夢さん» 嬉しいコメントありがとうございます!今後も楽しみにしてください (2017年5月11日 1時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
真昼ノ夢(プロフ) - すっごく面白かったです!一気に読んじゃいました(*^^*)更新を楽しみにしています (2017年5月10日 22時) (レス) id: 91c8c67e41 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - kanameさん» うれしいコメント誠にありがとうございます…変換ミスやっちまったなあ… (2017年5月7日 20時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
kaname(プロフ) - スッゴク好みです( ☆∀☆)応援しています(^o^)vあと、25ページの君が黄身になってますよー (2017年5月7日 19時) (レス) id: e97e2f1677 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サラ | 作成日時:2017年5月6日 9時