明けた朝 ページ42
とても魅力的な晩を過ごした翌朝には現実が待っておりました。
中也にいち早く謝らねば、と作之助にも背を押され会いに行けば、事務所の何処にも居ませんでした。
紅葉姐さんに聞いたところ、どうも単独の任務で暫く帰って来ないらしい。
拍子抜けでした。
何時頃帰って来るのか、それさえもわからないと。
私は拍子抜けを通り越して後悔すら感じました。
中也はその一カ月後帰って来ましたが、中々顔を合わす機会もなく、更に一カ月過ぎてしまいました。
この一カ月間、私はそれはそれは草臥れた雑草のようでした。
「紅葉姐さん、本当にどうしよう。
私絶対に避けられてる」
「知るか。自分で撒いた種じゃろう」
私は相談と託けてしばしば姐御の部屋に押し寄せました。
馬鹿の一つ覚えみたいに『中也に逢わなくてはならないのに会いに行けない』と連呼する私に、姐さんも大分頭に来ているようでした。
「いい加減にせんか。
其方が私に会いたいのならば幾らでも会うて来て構わん。
けれど今の主のように息を吐けば言い訳ばかりする見てられぬ女といるのは真っ平御免被る」
「…」
これ又手厳しい正論を云われてしまい、私は口を噤むしかありませんでした。
しかしその後優しく頭を撫でられました。
「避けたところで、主の頭の中の中也は消えぬ。
それにあの子は優しい子じゃ。主の心の在り方にも気付いておる」
そう云われ、私は姐さんにも背中を押される羽目になりました。
けれど私はその後一週間、中也と顔を合わす事なく、過ごす羽目になるのです。
「失礼します。首領、這入ります」
私はその日リンタロウ直々に呼ばれ、彼の執務室に参りました。
私が以前の地位階級を全てかなぐり捨てた事で、此処に来るのはめっきり減りましたから、何なのだろうと思い足を運びました。
予想だにしないものが、待っていました。
珍しくエリスを追っかけるリンタロウの声が聞こえないのと、『這入り給え』と聞こえて来た低い声に、本当に珍しいこともあるものだ、と私は扉を開きました。
執務机に座るリンタロウの前に、見覚えのある青年が立っていた事に驚きました。
「中也?」
私は思わず彼の名を呼んでおりました。
彼本人も私も呼ばれる事を知らされていなかったらしく、私と目が合うと直ぐさま視線を逸らしてしまいました。
ああ、悲しい。
「今日は君たちにしてもらいたい仕事があってね」
我々の戸惑いを無視。流石リンタロウ。
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サラ(プロフ) - 真昼ノ夢さん» 嬉しいコメントありがとうございます!今後も楽しみにしてください (2017年5月11日 1時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
真昼ノ夢(プロフ) - すっごく面白かったです!一気に読んじゃいました(*^^*)更新を楽しみにしています (2017年5月10日 22時) (レス) id: 91c8c67e41 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - kanameさん» うれしいコメント誠にありがとうございます…変換ミスやっちまったなあ… (2017年5月7日 20時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
kaname(プロフ) - スッゴク好みです( ☆∀☆)応援しています(^o^)vあと、25ページの君が黄身になってますよー (2017年5月7日 19時) (レス) id: e97e2f1677 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サラ | 作成日時:2017年5月6日 9時