闇よ 深し ページ30
太宰治は、林Aとの今の関係に正直満足していなかった。
男は優れた女が自分に堕ちる瞬間を、見てみたい生き物なのだ。
太宰の感覚もそれに近い。
近くのソファに押し倒してやれば、流石のAも動揺を露わにする。
太宰が彼女に想いを寄せるようになったのは一体何時からだろう。
きっとあの時だ。
彼女が、自分の暗殺対象の首を掻き切った後、まるで身内にするかのようにその冷たくなった屍に向かって合掌した時だ。
不毛なことをするマフィアがいたものだ、と陰で嗤ったが、その姿が、その合わされた手があまりに美しくて、太宰は一瞬息をするのを忘れていた。
彼女は度々マフィアにとって最もいらないことをした。
拾ってきた野良猫が事切れた時、心が引き裂かれたような顔で手厚く葬っていた。
怪我をした部下に上司自ら応急処置を施した。
彼女ほどマフィアから遠のいたマフィアはいないに違いない。
そして、彼女は太宰の知る女の中で最も高潔だった。
「…治。これは何の真似だ」
「何って、わかってるくせに。
こんな時間に女の子が一人で男を招くものではないよ」
太宰は冗談じゃないことを証明するために、彼女のブラウスの釦を乱暴に剥いだ。
森や紅葉が見たら激しく憤りそうな光景だ。
嫌、きっとリンタロウは太宰なら許すかも。
素晴らしい異能力者二人の間に出来る子はどんな素晴らしい異能力を持っているのか、とか…Aは場違いにもそう考えていた。
「考え事かい?呑気だねえ」
太宰はせせら嗤って、今度は下着に手を掛けた。飾りっ気のない白。女の魅力も感じられない下着だ。
話に寄れば、森の秘蔵っ子である彼女は彼の計らいで伽による仕事は全くないらしい。大した溺愛ぶりだ。
いや、他にも理由がある。
太宰は下着を触る手とは別の手で、彼女の右目を覆い隠す前髪に手を掛けた。
今度こそ、Aが必死に抵抗を始める。
「やめっ、治…本当に怒るぞ!」
「君が?是非見てみたいね」
身内にはゲロを吐けるほど甘い彼女のことだ。どうせ今頃如何やって制裁をしようとなけなしの頭で考えているのだろう。
その間にも、太宰は彼女の隠された片目を露わにされてしまっていた。
…片目は、なかった。
閉ざされた瞼の上には、刻み込まれた古傷がある。
Aは「やめてって言ったのに」と恨めしそうに言った。
心なしか、嗚咽を噛み締めているようだった。
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サラ(プロフ) - 真昼ノ夢さん» 嬉しいコメントありがとうございます!今後も楽しみにしてください (2017年5月11日 1時) (
レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
真昼ノ夢(プロフ) - すっごく面白かったです！一気に読んじゃいました(*^^*)更新を楽しみにしています (2017年5月10日 22時) (レス) id: 91c8c67e41 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - kanameさん» うれしいコメント誠にありがとうございます…変換ミスやっちまったなあ… (2017年5月7日 20時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
kaname(プロフ) - スッゴク好みです( ☆∀☆)応援しています(^o^)vあと、25ページの君が黄身になってますよー (2017年5月7日 19時) (レス) id: e97e2f1677 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラ | 作成日時：2017年5月6日 9時
