中原中也が好きな林 ページ25
中原中也は最近始終苛ついていた。
もし太宰が見たらきっと、『カルシウムが足りていない』と小馬鹿にするだろう、という程度には。
トレーニングルームの床を戦闘不能者で埋め尽くす程度には。
理由は明白だ、林Aである。
数週間前、Aが捕虜を逃がしたという理由で投獄された。其れ以降彼女には会えていない。
しかし、それから数日経って姉貴分の紅葉が不満を漏らしているのを聞いた。
曰く、Aが最下級構成員と一緒に下っ端の仕事をさせられているらしい。
他ならぬ首領の命令で。
最大の侮辱とも取れるこの処置に、紅葉がAと首領を責め立てたくなるのは理解出来た。
けれど、昨日偶然見かけた彼女の姿に、中也は幻滅した。
Aは微温湯とも言える環境で、人間臭いったらありゃしない笑みを浮かべていたのである。
あの、織田作之助とかいう男と。
中也は、林Aが”好き”だった。
初めて会った時、彼女からは何かこの世にないモノを感じた。
其れは地獄の夜叉の残忍さであり、楽園の聖母の慈悲深さであった。
まったく違う両者を持つ事で、彼女は善人にも悪人にさえもなれなかった。
其の生き方はまるで自分の生き方に悩む
中也が好きだったのは、彼女の中に眠る”夜叉”の方だった。
あの日、自分を食い物にしようとした人買いを、塵芥のように見ていた冷酷な瞳に中也は魅せられてしまった。
今になって判る。彼女が見ていたのは人の人権を踏みにじった外道でない、もっと違う憎悪の対象を見ていたのだ、と。
当然、中也を気遣っての事ではないのだ。彼の為に、出ない。
それでもあの瞬間に、Aが憎しみと怒りのの目を、自分の仇に向けた瞬間に。
中也は密かに高揚していた。
彼女に付いて行けば、もっと其の瞬間を味わえると思った。
今の彼女の姿は、中也を失望さえさせた。
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サラ(プロフ) - 真昼ノ夢さん» 嬉しいコメントありがとうございます!今後も楽しみにしてください (2017年5月11日 1時) (
レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
真昼ノ夢(プロフ) - すっごく面白かったです！一気に読んじゃいました(*^^*)更新を楽しみにしています (2017年5月10日 22時) (レス) id: 91c8c67e41 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - kanameさん» うれしいコメント誠にありがとうございます…変換ミスやっちまったなあ… (2017年5月7日 20時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
kaname(プロフ) - スッゴク好みです( ☆∀☆)応援しています(^o^)vあと、25ページの君が黄身になってますよー (2017年5月7日 19時) (レス) id: e97e2f1677 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラ | 作成日時：2017年5月6日 9時
