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堕ちて行く ページ20

私は以前から、彼を前にすると自分がまるで…まるでその、只の女のようになってしまう事を自覚しておりました。
その度に、何時も己を戒めるのですが、彼を再び目前にしたら全く以って効果がないのでした。


今もそうです。私は彼に下に敷かれた際、密着してきた彼の身体から漂うほんのり甘くスパイシーな香りが私は鼻を擽ってきます。


「大丈夫か、立てるか」

「ええ」


私はあくまで冷静を装い、徐に立ち上がります。今まで戦闘で鍛えていたはずなのに、力がすっかり抜けておりました。


「不良品も混じってるな…気をつけよう」

「ええ」


私の意識は最早上の空でした。ちゃんと返事をしたかも覚えてません。


不良品があったと知り、作之助は大分慎重になっておりました。
彼の異能で銃をチェックしてから、私に回すくらいでした。

…その振る舞いにまるで紳士のようだと、私は感心さえしてしまいました。


私の身の回りの男性と言えば、リンタロウに、治と中也くらいです。

けれど暫く彼等と会うのは控えようと思いました。

捕虜を逃し、胎児一人見逃せない子供を殺す度胸もないマフィアと関係を持っているなどと知れたら、彼等の評判に傷が付くでしょう。


それに、特に中也にはこの姿は見せられませんでした。
彼が好きなのは、私であって私でない存在だと知っていたからです。

彼が好きなのは、血化粧をしたマフィアとしての私なのです。

私はこの忌まわしい異能でそれさえも気づいておりました。嫌な話です。

彼とは良き関係でいたいと思っています。自分と似た境遇の、性分の良い彼を私は心の底から弟のように好んでいましたから。


「A」


私はいきなり呼ばれたので、考え事をやめました。


「もし、疲れてるなら休め」


私は首を横に振って、半端意固地になりながらも仕事を続けました。


いつの間にか、作之助は私の顔を睨めていました。


{…迷っているなら、いっそ逃げてしまえばいいのに}


彼の“聲”が聞こえてしまったから、というかその内容に私は思わず顔を上げてしまいました。

作之助もばつが悪そうに、視線を逸らします。


「…逃げろ、だなんて…簡単に言うね」


私は嫌味混じりにそう言ってしまいました。私が作之助にその手の事を言うのは、初めてのことでした。


{「…ああ、もし其れが難しいなら、俺も一緒に逃げてやる」}


突飛な事ばかり言われて、私は今日何度目になるか、動かしていた手を止めてしまいました。

昼下りの洋食屋→←恋い焦がれ、傷が付く



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サラ(プロフ) - 真昼ノ夢さん» 嬉しいコメントありがとうございます!今後も楽しみにしてください (2017年5月11日 1時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
真昼ノ夢(プロフ) - すっごく面白かったです!一気に読んじゃいました(*^^*)更新を楽しみにしています (2017年5月10日 22時) (レス) id: 91c8c67e41 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - kanameさん» うれしいコメント誠にありがとうございます…変換ミスやっちまったなあ… (2017年5月7日 20時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
kaname(プロフ) - スッゴク好みです( ☆∀☆)応援しています(^o^)vあと、25ページの君が黄身になってますよー (2017年5月7日 19時) (レス) id: e97e2f1677 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:サラ | 作成日時:2017年5月6日 9時

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