恋い焦がれ、傷が付く ページ19
「…A」
銃と向き合って数時間、作之助が話しかけて来ました。何でしょう、と耳を傾ければ私を案じた様に彼が目を寄越します。
「此処にいるのは、辛いか」{辛い、よな}
さも私の答えがわかっているかのような言い方です。
けれど、私の心持ちは前述言ったように違います。
「ううん、この仕事は寧ろ楽しい。
辛いのは、義父に失望された可能性があるってこと。それだけ」
「…そうか。俺には親がいないから、よくわからん」
…私は中也の時以後、人の過去は怖くって覗けませんでした。
そんなことより、今の姿を見た方が懸命だとも思っていましたから。
「だが、失恋の痛みは仕事で消すしかないって事はわかる。働いて忘れたらいい」
…私は予想も出来ないことを言われ、思わず吹き出してしまいました。
「サクは、面白いや」
「そうか」
確かに、過ぎてしまったことを嘆いていたところで何も始まらない。
それに私は自分の取った行動を後悔していないのだから、これからの功績でリンタロウへの信頼を取り戻すしかない。
「ありがとう、少しだけ元気になれた気がする」
「そうか、それはおめでとう」
彼はほんの少し口を横に引いて、笑ってくれました。
彼から安堵した思いを感じます。
彼が親身になって心配してくれたことが嬉しくて、私はほんの少し勇気が出ました。
しかし、私は知ってます。
少しでも勇気を出せば、人は前に進めるということを。
だから私はリンタロウと生きていくことが出来たのです。
思えば、私の原点はそこにあるとも言えました。
私は張り切って、また仕事を再開しました。今ならこびり付いた固まった血の色さえへっちゃらです。
しかし、私が次の銃火器に手を出そうとした時、事は起こりました。
「A!」突然、作之助が私に飛び掛かって来たのです。
私が事態が飲み込めずに為すがままでした。
遠くから、銃声と爆音の入り混じったような音が聞こえました。
私は作之助の下敷きになっていてよく見えなかったのですが、黒光りした破片のような物が床に跳びはねておりました。
作之助は、その体勢から暫くしてやっと跳ね起き、
「大丈夫かッ?怪我はないな?」
と、しきりに尋ねてくるのでした。
どうも、彼の異能力『天衣無縫』で、私の手に取る銃が私の触れた瞬間暴発し、私の腕が無くなるという未来が見えていたそうなのです。
確かに、地面には先端のひしゃげた銃が転がっていました。私が手に取ろうとした。
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サラ(プロフ) - 真昼ノ夢さん» 嬉しいコメントありがとうございます!今後も楽しみにしてください (2017年5月11日 1時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
真昼ノ夢(プロフ) - すっごく面白かったです!一気に読んじゃいました(*^^*)更新を楽しみにしています (2017年5月10日 22時) (レス) id: 91c8c67e41 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - kanameさん» うれしいコメント誠にありがとうございます…変換ミスやっちまったなあ… (2017年5月7日 20時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
kaname(プロフ) - スッゴク好みです( ☆∀☆)応援しています(^o^)vあと、25ページの君が黄身になってますよー (2017年5月7日 19時) (レス) id: e97e2f1677 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サラ | 作成日時:2017年5月6日 9時