林という女 ページ15
その日太宰と中也は二人で任務に当たっていた。二人は相方を組まされているから、然程珍しいことではない。
任務の内容は武器庫の整理だった。
そこで、『どちらがより多くの弾を対象に当てられるか』などという賭けをしようと言い出し、今射撃訓練場にいる。
しかし、そこであまり見たくない物を見てしまい、今互いに足を止めてしまっている状況だ。
射撃場は、上の階が防弾硝子の壁で出来ているので、訓練場一望を覗けるようになっている。
つまりそこから、林Aと織田作之助が射撃訓練をしているところも十分見えるわけで。
そして、二人とも視力がよいから珍しく自分たち以外の人間と仲睦まじい様子のAが見えてしまうのだった。
「...うわぁ」
太宰は珍しく、本当に珍しく感情を滲ませた声を上げた。
感嘆と、遺憾が入り交じったような気持ちだ。
「おい太宰、あいつって確か...」
「織田作之助。つい先月Aの教育係に任命された構成員だよ。まあ、首領パパの寵愛ってやつだよ」
「?先月は別の奴がやってなかったか?」
「富岡は3日でやめた。伊庭ってのは其の十日程前に辞めたよ。今回はきっと最高記録だろうねえ」
「...」
林Aを次期幹部とする為育てる...この話は先代首領が死んだ後、驚く程早く出た物だった。
けれど、幾ら優れた構成員がその役に付いても、一週間と保たずに其の役を下りるか、マフィアを止めてしまう。
影でどんな力が働いているのかは判らない。
けれど、いずれの構成員達もAの実力に恐れを為したか不祥事を起こしたかで辞めていってしまうらしい。
正直、中也はその話を聞いて当然だと思った。
あの女はどんな男が思うよりも高潔で冷血だ。
一人の男に左右などされず、誰にも媚びず屈しない。
だから、自分を含め数多くの雄どもが其の生き方に惚れるのだ。
「なあに、中也。妬いた?」
「莫ァ迦、そんなんじゃねえよ」
中也は其の昔地獄を見た。其処から救い出してくれたのは、他ならぬ林Aその人だった。
けれど彼は判っていた。彼女は決して自分を見ていたわけではないのだ。
“自分の中”の何かに執心していた。
そして、肝心の自分を見る前に彼女は自分を放してしまった。
中也が彼女に執心したのは、自分を見てほしかったからだ。其の感情は、師を慕う弟子のようであり、母を好く子のようであった。
其の願いが敵う事はなく、早くも二年経つが。
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サラ(プロフ) - 真昼ノ夢さん» 嬉しいコメントありがとうございます!今後も楽しみにしてください (2017年5月11日 1時) (
レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
真昼ノ夢(プロフ) - すっごく面白かったです！一気に読んじゃいました(*^^*)更新を楽しみにしています (2017年5月10日 22時) (レス) id: 91c8c67e41 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - kanameさん» うれしいコメント誠にありがとうございます…変換ミスやっちまったなあ… (2017年5月7日 20時) (レス) id: cb57f05521 (このIDを非表示/違反報告)
kaname(プロフ) - スッゴク好みです( ☆∀☆)応援しています(^o^)vあと、25ページの君が黄身になってますよー (2017年5月7日 19時) (レス) id: e97e2f1677 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラ | 作成日時：2017年5月6日 9時
