22話 狡い ページ27
翌日の部活、休憩時間に入った時のこと。
「サム、さっきのブロック練で突き指したやろ」
何時もと比べて右手の中指を気にしてプレーしているのを見逃すほど、自分の目は節穴では無い。
「こんなんほっとけばすぐ治るわ」
そうは言っても悪化でもしたら困るし、1年に頼むか？いや俺、って言っても余計に嫌がるやろうし...
さてどうしたものかと考えていた時、大空さんが救急箱を持って駆けてきた。
「あの、治くん。私やりますよ？」
「え？」
「え？」
「ちょ、ちょ！なんで大空さんサムのこと名前で呼んどん！？」
さらりと呼ばれたサムの下の名前。
「なんでと言われましても...。2人とも名字で
呼んでしまったらどっちも宮くんになってしまうじゃないですか」
「じゃあ俺かて侑くんでええやん！？」
そう、結論はこれ。
俺だって名前で呼ばれてもいい筈だ。
「いやでも、宮くんは宮くんですし」
しかしこちらに関しては彼女なりの考えがあるようで。
「ていうかなんでサムそんなビビっとん！？ウブか！！」
「それやとなんかサムだけ特別みたいやんか！」
「特別...」
「何照れとんねん！？」
「は？照れてないわ」
「侑も治も煩いわ。はよ治は大空さんにテーピングしてもらい」
そんないつもの言い合いは、北さんの一声で収束した。
でもやっぱりなんだか納得いかなくて。
「やっぱり納得いかん。そんなん狡いやん。大空さん、俺の事名前で呼んでみて」
「えっと...侑、くん...？」
それだけ言って彼女は首を傾げた。
何か違和感がある、そんなような表情だった。
でも大空さんが自分の名前を呼んだっていうのが、俺的に何かくるものがあって、
「ツムも人の事言えんやろ。顔きっしょ」
「なんやとサム！」
「ツムかてウブやん。顔赤いで」
ほんと、嫌なところを突いてくる。
まあさっきの仕返しといえば当然なのだが。
「やっぱええよ、宮くんで...」
「そうしますね、宮くん。」
大空さんはスッキリとした表情で俺の事をそう呼んだ。
そう、まだきっと、お互い慣れていないだけ。
それだけだ。
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淀(プロフ) - めーぷるさん» コメントありがとうございます！とても励みになります。現在私生活の方が忙しく更新できておりませんが、待っていただけますと嬉しです！ (2020年2月9日 13時) (
レス) id: a73053601c (このIDを非表示/違反報告)
めーぷる - え、めちゃめちゃ面白い・・・。更新頑張ってください！楽しみにしてます！ (2020年1月27日 16時) (レス) id: f01d8b6a59 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：淀 | 作成日時：2020年1月17日 2時
