香豌豆の揺れる家 ページ11
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翌日。光は、香豌豆の花を持って墓地にいた。
昔、姉と二人で雨に打たれて泣いた場所。それが、今は、一人。
「……姉さん。教えてもらいましたわ。」
光が、北にいる頃。ちょっとした流行り病が日本を襲ったこと。Aも、その病にかかってしまったこと。それで、呆気なく死んでしまったこと。
あれほど守りたかった相手を、あっさりなくしてしまった。それも、病で。
「こんなことも言うてたらしいやないですか。俺を守れたって。ほんと死ぬ直前に。」
つまり、あの時自分が死ぬ代わりに、彼女が死んだ。そういうこと、になるのだろう。
今思えば、あの時流れていたピアノの音は、姉がよく好きで弾いていたものだった。
「……アホやないですか。俺やって、姉さん守りたかったのに。そのために軍にだって行ったのに……」
視界が、滲む。きゅ、と光が目を瞑った、そんな時。
『光。泣くんやないの。これは、私の恩返し。』
「！」
聞こえた姉の声に、目を開ける。当然ながら、そこに姉の姿はなかった。
(……姉さん……)
「……姉さんらしいっすわ。」
落ちかけた涙を、拭う。光は持ってきた花を、そっとそこに置いた。
「姉さん。香豌豆……まだ、育ててますから。せやから、たまには帰ってきてください。男所帯っちゅーのもむさくるしいんで。」
恩返しっちゅーなら、そんくらいしてもらわんとあかんですから。
それじゃあと光は笑って、墓石に背を向けた。
暖かな陽気に、香豌豆も花を咲かせる。
満開になる頃まで、あともう少し。
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香豌豆の花言葉『優しい思い出』『門出』『別離』『ほのかな喜び』
END.
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陽花(プロフ) - 泣いた。その一言で充分やと、思うくらい素敵な小説でした。 (2016年8月23日 4時) (
レス) id: ff263d4226 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 幻想曲さん» うちの財前とは比べ物にならないくらい素敵 笑笑 (2016年3月30日 23時) (レス) id: 7e9a00bdd6 (このIDを非表示/違反報告)
幻想曲(プロフ) - 鈴さん» ありがとー！！！ (2016年3月30日 20時) (レス) id: 1deaa07922 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - ほんと良作すぎて。新作楽しみにしてる！ (2016年3月29日 14時) (レス) id: 7e9a00bdd6 (このIDを非表示/違反報告)
幻想曲(プロフ) - ノアさん» リョーマくん……そういえば書いたことないですね。いいかもしれません……考えてみます！ネタ提供感謝です！ (2016年3月6日 12時) (レス) id: 1deaa07922 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：幻想曲 | 作者ホームページ：http://uranai.amanoboru
作成日時：2016年3月5日 11時
