六話 ページ7
「……行く宛がないのなら、狭霧山の麓に住んでいる鱗滝左近次という老人を訪ねるといい。きっと、君を導いてくれるだろう」
青年のその言葉に私の心はぽかぽかと温かくなった。
名前も何も知らない青年だけど、優しい心の持ち主というのはすごく理解した。
鬼から私を救ってくれ、行く宛のない私に道を指し示してくれた。
私は思った。
この人こそが、私のなりたい
「何から何まで……本当にありがとうございます。お陰で、すごく心強いです」
私は青年に向かってにっこりと優しく笑って言ったが、その笑顔は少し固かったかもしれない。
うまく笑えないなぁ。
……やっぱり、辛い。
大切な人を失うのは。
そんな私を見かねてか青年が恐る恐る聞いてきた。
「もう……向かうのか?」
「いいえ、私はまだ……。お別れをしないといけないので」
私の大好きな村の人と。
最後のお別れを。
✿✿✿
私は丁寧に遺体に土を被せていった。
土を持ち上げて被せる、ただそれだけなのに涙が溢れてくる。
村の人達は、お母さん達がいなくなってからずっと本物の家族のように接してくれた。
それがどんなに嬉しかったことか。
最後の一人を埋め終わった瞬間、止めていた涙が滝のように流れてきた。
拭っても拭っても止まらない。
「う……ううっ……」
ごめんね、ごめんね……。
私に力があればあなた達を救えたのに……。
ごめ……。
私の体を誰かがふわっと抱き締めた。
目の前にはえんじ色と亀甲柄の羽織が見える。
さっきの人……?
まだいてくれたんだ。
「辛いだろうが……自分を責めるのはやめるんだ。
そんなことをしていても、死んだ者は戻らない」
わかってる。
わかっているけど、だけど……!
「君は……今、何をするべきなんだ?」
私はばっと顔を上にあげた。
青年の顔は無表情でただ前を向いている。
だけどその音、聲は……すごく心地よかった。
私がするべきこと、それはもうとっくに決まっている。
それに向かって動かなきゃいけないのに私は……!
私は意気込むために自分の頬をおもいっきりバシン!と叩いた。
その音に驚いた青年は私を抱き締めていた腕をはずした。
私は自分に言い聞かせる。
もう!私はいったい何を悩んでいるの!
悲しむのはこれで終わりにして進まないといけないでしょうが!
じゃないと死んだ村の人達が安心して、幸せになれない!
前を向くの!
311人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜子(プロフ) - 紫織さん» ありがとうございます!!夢主ちゃんを褒めていただきすごく嬉しいです!ありがとうございます!これからも、頑張って魅力的な夢主ちゃんを書こうと思います!大好きなんて最高の褒め言葉です!本当にありがとうございます!これからも応援よろしくお願いします! (2019年8月18日 21時) (レス) id: 9e6ca9452c (このIDを非表示/違反報告)
紫織(プロフ) - この作品がとっても大好きで更新されるたびににやけちゃいます!主人公の真っ直ぐな考えと天然さが合わさってとっても可愛いですね!これからも頑張ってください!! (2019年8月18日 19時) (レス) id: 76ad666f78 (このIDを非表示/違反報告)
桜子(プロフ) - チョコレートさん» ありがとうございます!!面白いだなんて……!とても光栄です!物語が進んでも、そう思ってもらえるように頑張ります!これから色々なキャラクターとの絡みも書いていきますのでお楽しみに♪これからも応援よろしくお願いします! (2019年8月11日 22時) (レス) id: 9e6ca9452c (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート - まっっじで面白いです!(≧∀≦)これからも更新頑張ってください! (2019年8月11日 22時) (レス) id: 20ae2e0245 (このIDを非表示/違反報告)
桜子(プロフ) - 降夜さん» ありがとうございます!!初コメントすごく嬉しいです泣。ストーリーのことも褒めてくださって……!コメントを見るたびに喜びで胸がホワホワしますぅ!更新、明日にはできると思うのでそれまでお待ちください!頑張ります!!!! (2019年8月10日 21時) (レス) id: 9e6ca9452c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:桜子 x他1人 | 作成日時:2019年8月4日 19時