すぐそばに君はいた −13−

609 健太side ページ9

.


健太side



山彰と飯を食って帰ろうとタクシーに乗り込んだ時、


瑠唯から電話が来た。




無視しようかなって思ったけど、


ふとAと一緒にいることを思い出して、電話に出た。




健太「はい。」


瑠唯『今すぐ事務所に来て。』


健太「はっ？」


瑠唯『いいから。早く。』


健太「ちょ！はぁ…。」




ったく何だよ…。




めんどくさいと思いながらも


運転手に事務所に向かってほしいと伝えた。





瑠唯 “ Aがストーカーに髪を切られた ”




健太「っ！！」




意味のわからない瑠唯のLINEに目を疑った。




Aのいない16人のグループLINEが、


一気に賑やかになった。




健太「すみません。飛ばしてもらってもいいっすか？」




タクシーの運転手にそう伝え、気持ちだけが先走っていた。




A…。




事務所に着いて慌てて中に入ると、


Aさんなら会議室に居ますって


何も聞いてないのに事務所にいた人に言われ


急いで会議室に向かった。





会議室のドアを開けて名前を叫ぶと、泣き出したA。


大丈夫だからと抱きしめると、


瑠唯がごめんと俺に謝ってきた。





少しして警察官が事情聴取をしに来た。


1人で歩いてたら急に髪を切られたと


話すAの顔色が悪くなってきてて、


ちょっとすみませんって話を中断させた。




健太「吐きそう？」


「…だいじょぶです。」


瑠唯「無理しなくていいからね？」


「はい。」




事情聴取を終えて、


やっぱり気持ち悪いと言ったAに


トイレ行く？って聞くと


吐けないから大丈夫と首を横に振られた。




そんなAの背中を摩るしか俺には出来なかった…。





「はぁ…。今日、健太さんに謝ろうと思ってたのに。」


健太「はっ？」


「強がって、健太さんに甘えなくてすみませんって。
今日こそ謝るぞって決めてたのになぁ…。
これからは可能な限りそばにいてくれますか？
ってお願いしようとしてたのに。」


健太「遅い。」


「ですよね。すみませんでした。」


健太「そんなお願い、今更する必要ないから。」


「…。」



何を当たり前のことを言ってんだか…。


そばにいるに決まってんのに。

610 健太side→←608

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す