不器用な恋 〈1〉

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クロスを俺につけて裏に行ったAさんが


ブリーチ剤も持って戻ってきた。



「本当にいいんですね？」




ブリーチ剤をコームに取ってから、


もう一度確認された。




翔平「お願いします。」



では、始めていきますねって


ブリーチ剤を髪の毛につけたAさん。




「沁みたら言ってくださいね。」


翔平「はい。」




鏡越しにじーっとAさんの行動を見ていた。



ふふっと笑ったAさん。



不安ですか？とは最近聞かれなくなった。




翔平「呪術廻戦 読みましたか？」


「読んでないですけど、
店長からあらすじは聞きました。」


翔平「いや、それダメなやつですよ。」


「ふふっ。だからどんなシルバーか
ちゃんと分かりましたよ？」




凄いでしょ？って微笑むAさんに、


読んでないのにその自信はなんですかって言ったら、


ふふっと笑い返された。





その笑顔を独り占めできる時間って本当にいいなぁ。




「美容師人生で一度だけ
笑いこらえるの必死だったお客さんがいて。」


翔平「はい。」


「今日はどうなさいますか？って聞いたら、
この色にしてくださいって
スマホを見せられたんですけど、」


翔平「はい。」


「それが自宅のカーペットの写真だったんですよ。」


翔平「えっ？笑」


「でも、その人すごい真剣に
この色にしたいんですって言うもんだから、
笑ったらダメだと思って。」


翔平「なかなかな人ですね。」


「ふふっ。こうやってブリーチしてるとたまに、
その人のこと思い出すんですよ。」


翔平「ユーモア溢れる人だったんですね。笑」





楽しそうに話す姿が可愛くて、ずっと見てられる。



やっぱり好きだわ。




「沁みませんか？」


翔平「大丈夫です。」


「じゃあ少し時間置きますね。
沁みたら言ってください。」


翔平「はい。」


「これだけ片付けてきます。」




そう言って片付けに行ったAさんが、


片付け終わって、紙コップを2つ持って戻ってきた。




そして、丸椅子を持ってきて俺の隣に座った。

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