不器用な恋 〈1〉

036 ページ36

.


LINEのやり取りをしていると、


流しましょうかって声が掛かって


シャンプー台に移動した。





顔に布をかけられて視界不良の中、


うっすらと透けるAさんの姿を見てた。





Aさんの優しくて丁寧な手つきで頭を洗われて


気持ちよくてずっとこのままでいいななんて感じた。






「お疲れ様でした。」



頭にタオルを巻かれて、椅子が動いた。




鏡の前に戻ってきて外されたタオル。




翔平「おっ…？」


「髪の毛乾かしたら
もっと色が分かるかと思います。」




そう言ってドライヤーをかけ始めたAさん。



熱風と優しい手が頭皮を刺激してきて、


眠たくなってきた。





眠気に勝って鏡を見るとキレイに髪が染ってた。




「どうですかね？」


翔平「むっちゃいいじゃないっすか！」


「ふふっ。良かった。
髪の毛整える程度に切りますね。」


翔平「お願いします。」




すげーと言って鏡にスマホを向けた。




翔平「あ、写ってもらってもいいですか？」


「え？はい。」


翔平「壱馬さん達がAさんを見たいって。」


「いいですよ。」



鏡に映る微笑んだAさんと変顔した自分を撮った




恥ずかしくて変顔しないと撮れなかった。




「後ろはこんな感じです。」


翔平「おぉー。」



頭の後ろに鏡を当てて見せてくれた。




今までと雰囲気が違う感じに染まってて嬉しかった。





翔平「…こ、この後まだ仕事ですか？」


「いえ、さすがにもう帰りますよ。」


翔平「良かったら……ご飯食べに行きませんか？」


「んー…いいですよ。」


翔平「…。」


「片付けしてからになるので
お待たせしちゃいますけどいいですか？」


翔平「はい。」




断りたかったけど、断りきれずに


付き合ってくれるのか…申し訳なくなってしまった。

037→←035

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す