不器用な恋 〈1〉

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数日後、元気になったAさんが楽屋にいた。



「皆さまにご心配とご迷惑をおかけして
大変申し訳ありませんでした。」



みんなに深々と頭を下げたAさんに、


元気になって良かったですって


LIKIYAさんがみんなを代表して言ってくれた。




LIKIYA「もう大丈夫なんすか？」


「はい。おかげさまで。治りました。」


LIKIYA「なんかうちのやつが
家にお邪魔したみたいですみません。笑」


「あーいえいえ。わざわざ申し訳なかったです。」


翔平「うちのやつとは、えぇワタクシ、
浦川翔平のことでしょうか？」


LIKIYA「それ以外いなくない？」


「ふふっ。わざわざありがとうございました。」


翔平「っ、いえ。その節は
どうも、ありがとうございました。」



恥ずかしくておちゃらけてみたけど、


メンバーには照れ隠しなのが


バレバレだったみたいだ。




「今日も前髪フワッとさせる感じでいいですか？」


健太「はい。」


「分かりました。」





「前髪どうします？」


樹「お任せします。」


「分かりました。」





「前髪どうしますか？」


彰吾「逆にどうしたらいいですか？」


「ふふっ。分かりました。」




やはりスピーディー且つ丁寧なAさんは


素晴らしい。




みんなが満足のいくヘアメイクをしてくれる。



「どんな感じにしますか？」


翔平「おまかせで。」


「じゃあバリカン用意しますね？」


翔平「ちょっ！俺だけ違くないっすか？笑」


「ふふっ。おまかせっておっしゃったから。笑」


翔平「さっき、樹もおまかせって。」


「あれ？ふふっ。笑」



ご冗談をおっしゃる、


元気そうなAさんを見てホッとした。



眼鏡姿のAさんも


少し幼く見えて好きだったけど。



メンバーの誰も知らない、俺だけが知ってる眼鏡姿。




あの日は普段見れない姿を見れて


胸がいっぱいだった。


本当にごちそうさまでしたって感じだった。



「チョコ美味しかったです。」


翔平「良かったです。」


「ごちそうさまでした。」


翔平「いえ、こちらこそ。」


「はい？」


翔平「あーいえ、なんでもありません。」



Aさんの優しい手。優しい香り。



幸せな時間。あっという間に終わる嬉しい時間。



これからもAさんと


一緒に仕事が出来ると思うと嬉しかった。









………なのに…






次の仕事からAさんの姿はなかった。








なぜ…。

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