不器用な恋 〈1〉

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動画を撮る気になれず、


ここにいたらメンバーに


しつこく言われると思って楽屋を出た。




どうしようか……悩みに悩んで、


Aさんのアパートの前まで来てしまった。




翔平「…。」





2階の角部屋…。




この階段をのぼるべきか、


このまま何事もなかったかのように帰るべきか…。





悩んだ末に、


階段を上ってインターフォンを鳴らした。




出るな。出るな。出るな。




そう願っているとガチャっとドアが開いた。




翔平「あっ…。」



ドアから顔を覗かせたのは、Aさん



……ではなく男の人だった。




翔平「…。」


？「んだよ。だったら俺に連絡してくんなよ…。」


翔平「っ！？」




男の人が呟いた言葉に…驚いて立ち尽くしていると、


きょーちゃん。誰？


って部屋の奥からAさんの声が聞こえた。




？「俺、帰るからー。」




部屋の方に大きな声で


そう言って靴を履き始めた男の人。




？「じゃ、あとは頼んだんで。」


翔平「えっ…。」



頼んだんでと言って


本当に出ていってしまった男の人を


見つめることしか出来なかった。




「えっ？ちょっと、きょーちゃん？
ねぇきょーへいっ？」




部屋の奥からAさんの声だけが聞こえた。




家に上がるべきか


このままそっとドアを閉めて帰るべきか…。




でも…あとは頼まれてしまったし…。




えーい、この際どうにでもなれっ！



「ねぇきょーへい？本当に帰ったのー？」







翔平「…翔平ならいますけど。」


「えっ！？」




Aさんの声がする方へ行って話しかけると


驚いて俺を見たAさんは


メガネを掛けていていつもと雰囲気が違った。




「えっ？浦川さん？」


翔平「…どうも。」


「えっ？なんでここに？」


翔平「お、見舞に…。」


「えっ、ちょっと待ってください。えっ…恭平は？」


翔平「先程の男性は帰りました。」


「嘘でしょ…。」


翔平「…。」




はぁとため息をつきながら、


こめかみを抑えて目を閉じたAさん。




翔平「大丈夫ですか？」


「…はい。」




ソファに腰掛けてるAさんは


メイクをしていないせいか、普段より幼く感じる。

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