不器用な恋 〈1〉

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Aさんのボブヘアーが見慣れてきた今日この頃。


雑誌の撮影でメンバーが集まった。




陸「もし年下と付き合ったら
どんなデートがしたいですか？」


「えっ？」


陸「ふふっ。今日の質問が、
“ 年上女性と付き合ったら
どんなデートがしたいですか ”
ってやつなんで、参考までに。」


「あぁなるほど。んー、そうですねぇ。」




今日の取材内容の台本をチェックしながら


ヘアセットしてもらってる陸さんが


Aさんにあらぬ事を質問してた。




もちろんワタクシの耳は


Aさんの返答に全集中してた。




チラッと俺を見た陸さんがニヤッと笑った。



絶対にわざと聞いた。



そう確信した俺は目を細めて陸さんを見た。




「んー年下ですもんね？」


陸「はい。」


「…だとしたら、
背伸びはしてほしくないですよね。」


陸「背伸び？」


「はい。年上に合わせて
いいお店に連れて行かなきゃとか、
頑張ってエスコートしなきゃとか
背伸びはされたくないですね。」


陸「へぇー。じゃあ例えばですけど、
吉野家とかでもいいんですか？笑」


「全然いいですよ。」


陸「いいんすね。」


「はい。でもこれは私の意見なので
全ての女性が同じ考えではないですよ？」


陸「参考程度に聞いてるだけなんで。
年下とのデート、どうですかね？」


「ねぇ。どうなんですかね？
ドライブデートとかですかね？」


陸「あぁじゃあ運転出来ないとかぁ。」


「いえ、私が運転するの好きなんで。」


陸「えっ？運転するんですか？」


「はい。マニュアルも運転できますよ。ふふっ。」


陸「へぇー。そうなんですね。」





終わりましたよ。参考になりましたかね？


って不安そうに聞いてるAさんに、


そりゃもうバッチリ！って笑顔で返事をした陸さん。




陸「だって。聞いてた？笑」


翔平「えぇまぁ。」


陸「ふふっ。俺結構いい仕事したでしょ？
したよね？ねっ？笑」




返事をしてないのに、


翔平頑張れよって肩にポンと手を置いて


笑顔で離れて行った陸さん。





みんな、俺の恋路で遊んでやがる。



Aさんが素敵な方であることは間違いない。



でも、この俺に、


長年付き合った彼と別れた女性の傷を


癒せる技能は持ち合わせていない。

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