ただいまを待ってる。

42 ページ42

.


そして始まったイベント。


愁平がステージに出てくると黄色い歓声。


久しぶりに大音量の


甲高い声を聞いて耳が痛かった。




でも…それよりも…


ステージに立つ愁平に釘付けだった。



まるで昔に戻ったみたい。


瞬きさえも惜しいくらいずっと見入ってた。




歌って……そして踊ってる…。



昔みたいな激しいブレイキンではないけど…


踊ってる愁平を見れるなんて…嘘みたい。




トークショー…。


歌ってる時とは別人のような…


私の大好きな声がスピーカーから聞こえる。



でも…内容が全く入ってこない。


声が音として聞こえる。


愁平のトーンは…落ち着く。




遠くてちゃんとは見えないけど…


笑った顔も昔と全然変わらない。


胸がキュンと締め付けられる。




久しぶりにあった愁平に…


私はあの頃と同じように恋をしてる。




トークショーが終わってハイタッチ会になった。


並ぶ人の群れに参加して、一歩一歩近づいてきた。



…なんて…言えばいいの？何を話したらいいの？



ドキドキと早くなっていく鼓動。


こんなの久々すぎて…苦しいよ…。




そして…私の番になった。



目が合った瞬間、


ニコッと満面の笑みになった愁平。



その笑顔だけで…私は泣きそうになった。




ハイタッチしながら…ずっと見つめあってた。




「…。」





愁平「…ただいま。」





「………うぅ…おかえりなさい。泣」




瞬きをしたら、頬を伝った涙。





ふふっと笑いながら頭をポンポンとしてくれた。



懐かしい…愁平の温もり…。




あとは…流れに流れ…


あっという間に終わった2人の時間。



涙を拭って、流れに沿って歩いた。




そして配布されたお土産という名の…りんご飴。




なんで？




その疑問はすぐに解決した。



ファンの子達が、


「MANZANAにかけてりんご飴とか可愛いかよ！」


って言ってて…。



今まで、そのタイトルの意味すらも


知らなかった私は…ググッた。





MANZANA…


スペイン語で『リンゴ』って意味だった。




りんご…ふふっ。りんごかぁー。




りんご飴を見て微笑んでしまった。


1人で笑ってる私は周りから見たら


相当痛いヤツだと思う。



でも…周りも幸せそう。




きっと愁平がここにいるみんなを


幸せにしてくれてるんだ。





愁平…おかえりなさい。

43 愁平side→←41

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す