人畜無害で健全な恋愛【１】 (ページ24)

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24 （回想・小学５年生②）ページ24

絆創膏を頬に貼り、手に貼り、膝に貼る。

その間、まふは顔に紙のような薄い笑みを貼り付けていた。

「痛いだろ」

「痛くないよ。慣れちゃったもん」

ケラケラと空元気な声が反響する。

「それに、僕はあの子達の役に立っているから」

まふは絆創膏越しに、頬のかすり傷に触れた。

「僕が痛がれば、あの子達は笑ってくれる。だったら、僕はあの子達のために耐えようと思う。こんな僕でも皆を楽しませることができるなら、少し血が出ることくらいどうってことないよ」

フッと息を零したまふは、グラウンドの方を一瞥する。

その視線が何を意味しているのか、馬鹿な俺でもすぐに分かった。

まふをいじめている奴らは今、仲間と楽しく笑い合っている。

対するまふは、今でも心を抉られている。

奴らがまふのことを忘れても、まふはいじめのトラウマを忘れられない。

まふが深く傷ついていても、加害者はそれを笑い事で済ませてしまう。

そんな現実を、まふは目線一つで語った。

まふの言動から受けたショックと自分自身の不甲斐なさで、俺は何も言うことができなかった。

そんな俺に向かって、まふは造形物のような笑顔を見せた。

……結局、その日に俺ができたことは、まふの傷の処置だけだった。