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「鶏肉、卵、玉ねぎ……オムライスくらいは作れそうだね。そらる、買い置きのケチャップある？これじゃ、ちょっと足りないかも」
冷蔵庫を開けたまふが、テキパキと調理の準備に入る。
いつもはヘラヘラしているまふだが、その実は優秀で要領の良い奴だ。
そのくせ自分を過小評価しがち。
外面を飾ってクールキャラぶって、蓋を開けたら冴えないオタクな俺とは対極のタイプだ。
ちぐはぐの俺達がどうしてここまで親しくなれたのか、今になっても不思議に思う時がある。
「おーい、手が止まってるよー」
「あ、ごめん」
鶏肉を切るまふの隣で、俺はフライパンにバターを敷いた。
あっという間に溶けたバターから、良い香りが漂ってくる。
「チキンライス作っちゃうから、卵割って混ぜといてくれる？」
「了解」
立ち位置を入れ替えると、まふは手際よく具材を炒め始める。
よほど手馴れているのだろう、まるで職人の手付きだ。
「……」
卵の殻を割り、塩と牛乳を入れて混ぜる。
その合間、横目でまふの出で立ちを見ていた。
叱られないよう作業を続けながら、視線は次第に足元へ移動する。
「……膝、どうした？」
五分丈のズボンから覗く右膝に、ワイドサイズの絆創膏が貼ってあることに気が付いた。
白いガーゼに滲出液が付着していることから、古傷を隠すために付けているというわけではなさそうだ。
「ここに来るまでに転んじゃったんだ」
「どうして？」
「どうしてって、ドジしちゃっただけだよ」
「そうじゃなくて、何が原因で転んだんだ？」
「えーっと……バナナの皮を踏んずけて」
「……外を歩くときは気を付けろよ」
「えっ、待って！ ツッコんでよ！ ツッコまれないボケなんて、この世で一番需要ないじゃん！」
素っ気ない俺の返事が癪に障ったのだろう、まふはむすっと口をへの字に曲げ、ジト目でこちらを睨んでくる。
俺はまふの頭をぽんぽんと撫でて機嫌を取りながら、とある確信を一つ得ていた。
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作者名：マミカ | 作成日時：2019年11月3日 16時
