◆第五条 ページ5
「……忙しい時にすみません。でも、もし警備に出かける勲さんが私を見つけてくれなかったら、きっと__」
「……ん?ちょっと待ってくれ。警備?」
土方さんが話の腰を折る。
「あぁ、今どき何が起こるか分からんだろ?もしかしたら、眠りについているお妙さんの身にナニか起こるかもしれないと思ってだな……」
「いやそれアンタがナニか起こそうとしてたよね、絶対そうだよね?」
勲さんの話しに素早くツッコミを入れる土方さん。
ツッコミが慣れてる……!
「ハァ……余談はその辺にしといてもらえますかね、土方さん」
「何で俺だ!?」
「近藤さん。例の呉服屋暗殺事件の件ですけど……」
「無視かァ!!」
土方さんの言葉に耳もくれない沖田さんは、手に持っていた資料を勲さんに渡すと、顔色一つ変えず話し始める。
「一番隊総出で聞き込みもしやしたけど、誰も目撃した人はいないそうです」
「そうか……。あれから5日も経過してんのに、未だ手がかり無しか」
ゴホンと一回咳をし、土方さんも2人の会話に混ざる。
「呉服屋の店主、橘才太郎は市民からも愛され、特に恨みを買われるような人物ではなかったらしい」
''呉服屋の橘才太郎''。
聞き覚えのある言葉に、私の背筋がゾクリとした。
「現場もとにかく酷いもんでさァ。夫婦共々ザックリいかれてます」
夫婦……?
脈打つ鼓動のスピードが早くなっていく。
信じたくないと思う気持ちと、半ば諦めかけている気持ちが交差する。
30人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みさ | 作成日時:2016年7月16日 21時